ニューアコが理想とするフェスの原風景

――10年後、20年後のために木を植えるという発想に至ったのはなぜだったのでしょうか。

やっぱり、子どもたちでしょ。子どもたちにとって、遊べるフィールドがあって、そこに音楽がある、その豊かさを感じられる場所になればいいんだけど、ロックフェスってどうしても大人が観たくて無理やり子どもを連れてくるから、「ロックフェス虐待」みたいな言葉が出てきちゃうわけじゃん。そういうものではなくて、子どもたちが大人になったときに、自分でもそういうところに行ってみたいと思ったり、それ以上に自分で面白い場を作ったりするきっかけになればいいなって思っていて。

音楽界の鬼・TOSHI-LOWが作る誰よりも優しい音楽フェス。「ニューアコ」が特別であり続ける理由_05

自分たちにとってのフェスの理想は、MARTIN(OAUのメンバー)の子どもの頃の原風景なんですよね。MARTINは親もミュージシャンで、3歳ぐらいから親とバンドをやっていていて。OAUの『FOLLOW THE DREAM』っていうアルバムの盤面にその写真があるんだけど、フォークフェスティバルで3歳のMARTINがバイオリンを弾いて、みんなに拍手されて。大人たちはビールを飲んでいて、それがすごい楽しかったと。

音楽界の鬼・TOSHI-LOWが作る誰よりも優しい音楽フェス。「ニューアコ」が特別であり続ける理由_06
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そういう原風景をいかに守っていくかを想像しながら。もちろん、完全にルールをなくすなんてできないのはわかっているけど、その原風景を作り出すために、いくらでもまだ工夫ができると思っていて。

人数が多ければトラブルがあるのは当たり前だけど、その2日間なり3日間なりは、自分たちが作る国の中の秩序にのっとってやりましょうって言ってる。ふだんは、「子どもがうるせえ」とか、「ベビーカー乗せるな」とか言ってるのが実際の社会かもしれないけど、この3日間は、子どもに優しくしてやれよって。ここでは、「ベビーカー、押しましょうか?」っていう人が溢れてほしいっていうかね。

(後編へつづく)「限りある人生で何をしたいか。そこに答えがある」 OAU/BRAHMAN TOSHI-LOWの思い