タコピーのデザインは落書きから生まれた?
――本作のトリックスターであるタコピーは、その言動がインターネットミームにもなりつつあります。秀逸なデザインによる拡散だと思いますが、これはどうやって生まれたのでしょう?
タイザン5 タコピーはかなり気に入っているキャラクターで、自分としては「かわいくなるといいな」と思いながら描いていたので、読者の方にもかわいがっていただけたらうれしいです。宇宙人を出すということを先に決めていて、パーッと書いてみたものがそのまま採用になりました。
F田 描くのが早そうですし、キャラデザには賛成でした。
――なるほど、ぱっと書いたものから。最終話の展開に説得力があるのもうなずけます。
F田 先にざっくりこういう役割のキャラクターを出す、というキャラ表があって、名前の案とビジュアルを埋めていったんですよね。
タイザン5 キャラを立たせるのが不得手なので、今回は頑張って立たせようと意識していました。キャラクターの役割が先に決まって、プロットを考えながら深めていきました。タコピー、しずか、まりな、東の立ち位置は最初になんとなく決めていました。
F田 キャラクターを決める打ち合わせが一番長かったですね。タイザン5先生は読み切りがうまい作家さんだけれど、次はキャラクターが必要だねという認識が編集部にあったんです。名前を考えながら、タコピーは語尾もあったほうがいいねという話もしました。
タイザン5 ですね。名前と語尾が一緒に決まった感じでした。セリフを入れる時もタコピーは自然と語尾が「ピ」になるので、しっくりきていたと思います。
F田 タイトルはその後で決めました。
「タッセル」があんなにハネるとは予想外だった
――記憶に刺さるようなキーワードやセリフが多いのも特徴的に感じます。何か意識されたりしているのでしょうか?
タイザン5 普通にネームと一緒にセリフを入れていて、特に意識はしていませんでした。
F田 告知ツイートよりリアクションがあるパロディを見かけるとちょっと悔しかったです。
タイザン5 こういうところが話題になるんだ、と驚くことが多いです。
――タッセルなどの話題になりやすい小道具や考察を促すようなプロットは反響を見越してつくられたのではないか、とも感じるんですが、そういう戦略性はまったくなかったのでしょうか?
タイザン5 まったくなかったです。そういった反響があるとはあまり予想していませんでした。タッセルも、あの回は「東くんを出す回」だったので、本当になんとなく入れていました。
F田 タッセルもあんなにハネるとは思ってなかったですよね。コンブチャもそう。
タイザン5 意外なところを見てくださっているんだ、と印象深かったです……。
F田 やりながら、みんなこういうの好きなんだなと学んだ部分もありますが、それを取り入れられる進行ではなかったですね。
タイザン5 はい、上下巻なのが決まっていて、プロットをある程度組んだ状態だったので。なので反響には本当に驚いています。4話で最初に感じたかもしれないです。
F田 4話は(2021年の)大晦日だから閲覧が少ないのではないかと少し不安に思っていたんですが、コメントが今までにない勢いで伸びたのは覚えています。
タイザン5 そうですね! すぐ1000件を超えたという話でうれしかったです。
F田 あとは13話も人気です。なぜかはわからないですが、公開から1週間での閲覧数が最終話を除いて一番多かったです。
『まりなキングダム』が不人気、『タコピーの救済』が人気
――具体的にはどれくらい?
F田 ひとつの回の閲覧数が1日に350万というのが連載作品では初の記録でした。更新日1日で100万閲覧は安定して超えていて、1週間だと300万くらい。推測にはなりますが、SNSなどでの反応を見る限り、読み返しに来てくれる読者も多かったのではないかと思います。
――逆に不人気の回というのもあるんですか?
F田 3話ですね。
タイザン5 3話でしたね!
――かなり明確にあるんですね。
タイザン5 数字を見るとはっきりとありました。3話は……暗すぎるからでしょうか? まりながただイヤなやつで終わってしまったのかもしれないです。
F田 「地獄だった」とか書かれていましたね。
F田 4話につなげる話だったのでインパクトは少なかったかなと思います。3話で少しトーンダウンしてしまったけれど、4話で多少盛り返せたのでよかったです。こういう数字は都度共有しています。
――反響は予想外とのことで、予想していない考察で盛り上がっていたりもしたかと思いますが、どういうご心境でしたか?
タイザン5 うれしかったです。こんなに話題にしていただけるのかと驚きました。
F田 反響は更新の翌朝に「こうだったよ」と連絡する程度でしたね。
まったく計算外だったというネット上の大きな反響。後編では、作者の意図の外からの議論までを巻き起こした作品がどう作られたのか掘り下げる。
(インタビュー後編へ続く)
取材・文/宿無の翁
撮影/長谷部英明