アメリカの支援を受けても太刀打ちできない

我が国では現在、ヘリだけではなく、ジェット艦載機を搭載ならびに運用ができるようへリ空母の「いずも」と「かが」の改修工事プログラムがスタートしており、「いずも」は2027年、「かが」は2026年度中の終了を予定している。

さらにアメリカから購入した42機のF-35の半数を宮崎の新田原航空自衛隊基地に投入し、一個飛行隊(18 機プラス3機)を新設することも決まっている。

平時には「いずも」と「かが」を多目的に使い、有事の際には新田原基地からF-35を送りこみ、空母として運用するという作戦である。とはいえ、「いずも」も「かが」も10 機を搭載するのが精いっぱいで、中国の大型空母と比べてもサイズが小さすぎる。

空母に積載されたステルス戦闘機同士の交戦は戦史上まだないものの、中国と日本が衝突したらと思うと、背筋が寒くなる。

もし尖閣周辺で日中が軍事的に衝突するようなことがあれば、沖縄近海の西太平洋に常時陣取る「福建」などの空母機動部隊から、J-35などのステルス戦闘機群が、さらに中国本土の基地からもJ-20ステルス戦闘機などが飛来してくるだろう。

自衛隊が那覇、新田原の基地などからスクランブル対応したとしても、「福建」が就役する2024年以降は劣勢をまぬがれない。

米軍の力を借りようとしても、中国は空母キラーと呼ばれる対艦弾道ミサイル「東風26B」、「東風21D」も保有しており、うかつな空母展開は難しい。2024年以降はアメリカの支援を受けても中国に太刀打ちできない可能性もあるのだ。

日本としては沖縄から尖閣諸島により近い下地島などの未利用滑走路を活用するなどして、周辺離島に敵のミサイルなどから守るための強化コンクリートで覆われた格納庫つきの前線基地航空隊を充実させるくらいしか、現状では対抗策は思い浮かばない。

中国の最新鋭ステルスJ-35、そしてそれを運用する大型空母「福建」が実戦配備される日が、日本の防衛にとって「悪夢の日」とならないことを望むだけだ。

文/世良光弘 写真/AFLO