「酔中花」ヒットに雑誌連載、初書籍。令和の坂本冬美が爆上がりのワケ_3

桑田佳祐が紡ぐ、運命の赤い糸

――『Snow Man』目黒蓮さんとの対談は、激アツでした。

あれは……私の我儘というか、職権濫用というか、反則スレスレといいますか(苦笑)、スタッフの方がご尽力くださいまして。おかげで本当に楽しい時間を過ごさせていただきました。私のために時間を作ってくださった目黒蓮くんにも感謝です。

――さぁ、そして9月20日からは、明治座で1ヵ月近くに及ぶ座長公演が幕を開けます。

第一部の芝居は石井ふく子先生が演出をしてくださる人情劇で、私がいただいたお役は、大酒飲みで、いつもガミガミガミガミ、文句ばかり言っている長屋のおかみさんなんですが……。

――これまでは花魁をはじめ、華やかな役が多かった冬美さんにしては、珍しく地味な役です。

いままでも私なりに一生懸命にやって来たつもりでしたけど、振り返ると、「私は歌手だから」という心の甘えがどこかにあったような気もしていて。でも、石井先生ははじめてお会いしたときから、私をひとりの役者として見てくださっていて。
セリフが多く、見た目は地味という今回の役も、「すべてお勉強ですよ」という、石井先生の親心から来ているものだと思って、より一層頑張らなきゃと気合を入れ直して取り組んでいます。

――それくらい、難しい?

いっつも、文句ばっかり言っているというのは、素の私に近いんですけどね(苦笑)。セリフは多いし、衣装は地味なお着物、お化粧も控えめで……気持ち的には、『また君に恋している』がヒットしたとき、ジーンズを履いてステージに立ったときに近いような感じです。

――それは……どういう?

演歌歌手としては、ビシッと着物を来て髪を結いあげて、変身完了! さぁ、歌うぞ!! というのがフツーじゃないですか? それが、ふだん穿いているジーンズでステージに立つというのは、「ごめんなさいね、こんな格好で」という恥ずかしさが先に立って。袖からセンターに歩いて行くのにも、心臓がドキドキしっぱなしだったんです。

――そのときと、似ている?

最初に言っておきますね、これはネタじゃなくて、本当の話ですから。いいですね? 笑いを取るために話すことじゃないですからね。

――心して、承ります(笑)。

ジーンズにジャケットでステージに立った私を観て、「なんだ、坂本冬美はまだ出ないのか?」とお手洗いに立つ方がいらっしゃったんです。それも、1人、2人じゃなく、結構な数の方が(苦笑)。

――話を作っていませんか?

だから、最初にお断りしたじゃないですか。これは本当の話です、と。作っても盛ってもいない、正真正銘の実話です。もっとも自慢げに話すことじゃないんですけどね(笑)。

――どんどん脱線していきそうなので、話を明治座の公演に戻します。今回、冬美さんの相手役は、初共演となる中村雅俊さんです。

運命の糸と申しますか、神様のお導きと申しますか……。中村雅俊さんが桑田佳祐さんがお作りになった大ヒット曲『恋人も濡れる街角』をリリースしたのが、1982年。私が『ブッダのように私は死んだ』に巡り会えたのが、2020年。実に38年の時を超え、桑田佳祐さんで結ばれた2人が同じ舞台に立つなんて、夢のようなお話です。

――2部の歌の共演も楽しみです。

基本的には、私のパートと中村雅俊さんのパートに分かれているんですけど、「一緒に歌ってくださいますか?」とお願いしたら、「よろこんで」と言ってくださったので、デュエット……なんてこともあるかもしれません。みなさん、ぜひ、明治座に足をお運びください。

「酔中花」ヒットに雑誌連載、初書籍。令和の坂本冬美が爆上がりのワケ_4