検査を繰り返しても異常なし

その1年の間、ぼんやりとしていたわけではない。
最初に救急でかかった病院に、いっこうによくならない体調を相談すると、たくさんの検査をしてくれた。

めまいのために耳鼻科、循環器科を受診し、総合内科でアドバイスを受け、整形外科で頚椎を、さらには甲状腺やホルモンまで調べてもらった。けれど重篤な何かは出ない。

ここまで体調が悪いと、検査のたびに「何か出てくれ」と思うようになるから不思議なものだ。いっそ病名がはっきりすれば治療ができるのに、この病院めぐりから解放されるのに……と必死だった。

心療内科の受診も勧められ、安定剤も処方される。正直効いているのかどうかはよくわからない。
あとはひたすら規則正しい生活、無理をしない、しっかり栄養を摂る、そのくらいしか出来なかった。

そうこうする間に、3歩進んで2歩下がりながらも、少しずつ復調し始め、年を越え、また夏がやってきた。
そしてまた同じことになった。

熱中症はクセになる?

その日は祝日だったのだが、午前中から取材で出かけていた。予想最高気温は35度。
とはいえ、移動は基本涼しい電車だし、お昼過ぎには仕事を終えて帰宅。
遅めの昼食を摂り始めたところで、それはやってきた。

ものすごい冷や汗と動悸、めまい……「あ、これ、知ってる」。
久しく遠ざかっていたあの体調不良が戻ってきたな、と思った。

買い置きの経口補水液を飲み、体を冷やすも、もう全然起き上がれない。家でひとり。またしても休日……まだ体力のあるうちに、と休日診療の病院に連絡し、タクシーで向かった。いろいろ調べてもまたもや数値は悪くはなく、それでも大事をとって入院することに。
ときは2020年8月。世の中はすでにコロナ禍にあり、こうして対応していただけたことは幸運以外の何ものでもない。

結局、これも熱中症だったのだ、と今となっては思う。
前年の教訓を生かすつもりで、暑さを避け、徹底対策をしていたことがかえって災いして、私は暑さに慣れていなかったのだろう。そんな中、炎天下、取材用の荷物を抱え、日傘も帽子もなしに駅から20分くらい歩き、帰宅するまで水分を摂ってはいなかった。もちろんずっとマスク着用だ。

帰宅して、熱いお味噌汁を飲んだとたん、具合が悪くなったということは、その温度変化に自律神経がまた悲鳴を上げたのだろうと推測するしかない。

強すぎる日差し、高すぎる気温が人間の体に与える影響

長々とこんなことを書いたのは、今さらかもしれないけれど、熱中症を絶対に甘く見てはいけないということを改めて知ってほしいからだ。

3年前の8月、救急車が来るまでの時間、このままどうにかなったらどうしよう、と思うほどしんどく不安で、その後自宅で寝たきりで過ごした3日間は生きた心地がしなかった。
医師も言っていたが、熱中症による人体調不良を長く引きずる人は結構いるし、これをきっかけに自律神経失調症になる人も少なくないそうだ。

熱中症のいちばんの対策は「予防」だ。
自分は知識も対策も万全、と思っていた。実際、それなりにできていたとも思う。でも足りなかった。
風邪っぽい、病み上がり、寝不足、食欲不振、下痢、二日酔い、貧血……ふだんの生活においては小さな不調でも、この猛暑においては、何かひとつでも当てはまったら、そんなときは絶対無理をしたり、羽目を外してはいけない。
そのぐらい今の日本の夏の暑さは怖い。

そしてとにかく「ヤバい!」と感じたら病院へ。
こんな遅くに悪いかも……
休日診療にわざわざ行くなんて……
救急車だなんてもっと具合の悪い人もいるだろうし……
明日まで我慢すれば病院も開くし……

これらすべてが、自分自身の頭をよぎった思いだが、遠慮は無用、迷いは禁物。
そのくらい心して向き合いたいのが熱中症だ。
あれから3年。ようやく体調は平常運転となりつつある。

元気にラウンドできる幸せと健康のありがたさをかみしめるばかりだ
元気にラウンドできる幸せと健康のありがたさをかみしめるばかりだ

画像/本人撮影