熱中症と風邪と自律神経

不安を抱えたまま、その日もなんとか眠りにつく。
横になっていてもなんだかふわふわしているようで熟睡はできない。
部屋の冷房は27度設定で、扇風機を遠くにおいてかける。もうずっとこの環境にいる。

翌朝目覚めると頭痛がだいぶひいている。これはうれしい!
でも、ふらつき、だるさは変わらない。
ろくに食べていないからかな?と、バナナや野菜ジュースを口にする。
とにかくぐらぐらして起きていられないので、横になるだけだ。
今日も欠勤するしかない……幸いにもお盆期間だったので、差し迫った約束はなかったけれど、やはり予定外の休みはイタい。

お腹もユルい。
トイレで便を確認したらビビッドなオレンジで、「血便!」と顔面蒼白になるも、朝の野菜ジュースであると思い当たり、ホッ。そのくらい不安なのだ。
この日の晩はうどん半玉に卵を落として、むりやり飲みくだして就寝。
こうして熱中症2日目は終わった。

3日目の朝。
頭痛こそほぼ消えたものの、体調は変わらない。
ここまでくると心底不安になってくる。
私のスマホは「熱中症 回復」「脱水 症状」「熱中症 治らない」といった履歴だらけだ。
よくならなかったらいつでもまた連絡ください、って言ってたよな……そうだ、もう一度病院に行こう。
救急で診てもらった病院に今一度向かった。

結局、点滴1パックと血液検査をもう一度。
医師が言うには
「救急で来たときも、今回もそうなんですが、実は血液検査には強い脱水を示す数値は出ていないんですよ。水分もちゃんと摂っていたんですよね? ただ、暑さで自律神経のバランスが崩れて、こうした体調不良を引き起こしている、それが長引いている、ということが考えられます。あと、風邪をひいていましたか?」。

ひいてました……でも、それは3週間も前で、確かに2週間くらい長引きましたけど、完治してからもう1週間は経っているはず……その旨を伝えると
「夏風邪と熱中症は紙一重、というか、風邪で体力が落ちていて熱中症になりやすかったり、熱っぽくて筋肉が痛いから熱中症かと思ったら風邪だった、ということもあるんですよ」とのこと。
そういえば救急で診てくださった先生も風邪のことを何度も聞いてきていた。そのときはフラフラでちゃんと答えられなかったのだが。

いろいろなことが腑に落ちた。
風邪の病み上がりだけではない。
ちょうど台風10号が来ていて、気圧が不安定な日々。
私は昔から気圧の変化に弱く、台風が来たりすると、一気に頭が重くなってどんよりする。
そんなときに飲む頓服として、軽い安定剤も持ち歩いているほどだ。
そもそも自律神経が不安定になりやすい傾向がある。

つまり、風邪(本人は治ったつもり)で体力が落ちていたところで、スコールの降るような湿度の高い真夏日のゴルフで自律神経が乱れて体の調整がうまくいかなくなってきているところに、火照った体が十分冷えないうちに湯船で温まって、さらに自律神経が乱れ、気圧の変化がそれに拍車をかけて、治りを遅くしている……そういうことだったのか、と自分なりに納得してみた。

「検査の数値は問題ないので、できる範囲で日常生活に戻りましょう。会社にも行っていいですよ。水分はもう十分足りているので、あとは食事で栄養をしっかり摂って。食べ物から摂る水分というのもありますからね」とのお墨付きをもらい、その翌日から、ようやく出社したのだった。

3日間すっかりお世話になった経口補水液。タブレットはラウンド中に舐めていたもの
3日間すっかりお世話になった経口補水液。タブレットはラウンド中に舐めていたもの

だが、完全にいつもどおりではまったくなかった。
どんよりとした倦怠感は常にあり、頭がいつもの10倍くらいの重さに感じられて、ぐらぐらする。
ほんのりと吐き気のような不快感があって食欲もない。会議や打合せで力強く話そうとするとくらっとして話せなくなることもしばしばだ。

そしてこの状態は、一進一退を繰り返しながら、ほぼ1年間続いたのだ。