子どもを迎える側だけでなく、産む側にも伝えたい

武内さんは、特別養子縁組制度を経て子どもを迎えたことをメディアを通じて発信し続けています。その理由は、自分に正直でありたかったこと、そして多くの人にこの制度を知って欲しかったからと答えます。

「特別養子縁組制度で子どもを迎えたことを隠しておくこともできたと思います。ただ、タレント活動をしている中で、突然子どもが生まれるのはおかしいですよね。子どもを迎えた後も子育てがあるので、今までと同じ生活もできない。つじつまが合わない中で、今まで通り生活するの嫌だったんです。あと、私が特別養子縁組制度を紹介することで、この制度を知ってもらうきっかけになればいいなと思ったのもあります。特別養子縁組で子どもを迎えた家族も、ごく普通の家族と同じなんだと知って欲しいんです」

【私のウェルネスを探して】武内由紀子さんが「特別養子縁組制度」でふたりの子どもを迎えたことを発信し続ける理由_4

さらには、子どもを迎える側だけではなく、産む側にも伝えたい。世の中には、妊娠・出産しても、さまざまな事情から育てられない、面倒を見られないという人がいます。そんな対岸にいる人たちの助けになれば、という気持ちもあります。

「実母になる方に、特別養子縁組制度があることを知ってほしいんです。ニュースを見ていても『生んだけれどどうしようもなかった』『一人で育てられなかった』と、悲しいニュースが多すぎます。うちの子たちは幸せだったんですよ。この子たちを産んでくれた実母さんが、この制度を知っていたから。そんな産む側で困っている人の助けになれば、知るきっかけになればという思いもあります。

【私のウェルネスを探して】武内由紀子さんが「特別養子縁組制度」でふたりの子どもを迎えたことを発信し続ける理由_5

特別養子縁組で子どもを迎える人は、不妊治療をしている人だけではなく、産めるけれど産まない人、一人目は自分の子で、2人目を特別養子縁組で迎える人などさまざま。子どもを待っている人がいます。そんな思いから、発信を続けていきたいと思います」

4歳の長男にはすでに「真実告知」をしている

前編でも書いたように、不妊治療を45歳まで行ってから、特別養子縁組について考えると、受け入れ年齢より少し上になってしまいます。治療を始めた段階で、その選択肢を伝えてあげても良いのでは、と武内さんは言います。

「私が通っていたクリニックでは、特にお知らせはありませんでした。だけど、そんな制度があることを知るだけでも、選択肢は増えると思います。制度も少しずつ変わり、受け入れ側の親の年齢も徐々に上がってきています。ただ、実際に45歳で子どもを受け入れた私の経験から言えば、やっぱり子育ては体力面が大変ですよね(笑)。そう考えると、早いに越したことはないのかなと思います」

【私のウェルネスを探して】武内由紀子さんが「特別養子縁組制度」でふたりの子どもを迎えたことを発信し続ける理由_6

気になるのが、子どもにいつ事実を伝えるかということ(特別養子縁組制度では「真実告知」と言います)。昔のドラマや映画では、戸籍を見て初めて知るというエピソードがよく描かれていましたが、最近は「物心がつきはじめた頃から伝えるのが良い」とされているそうです。

「団体では真実告知をした方が良いとしていて、小さい頃から本当のことを伝えることで、ショックを少なくしていく方法をすすめています。4歳の長男にも、もう伝えています。『産んでくれた人は誰?』と聞くと、実母の名前を言います。私が教えているからなのですが、実は、それがどんな意味なのか、よく分かっていないかもしれません。今はよく分からなくても、そこから『僕は誰から生まれたのか』『みんなとなぜ違うのか』『どうやって生まれたのか』を、少しずつ伝えていくことになります。1回で終わりじゃないんですよね」