熾烈なシード権争いが生む「選手の劣化」
たしかにリランキングの回数を増やせば、いいことばかりのように思える。第1回のリランキングリストを見てみると、30位以内に入った選手のほとんどは、今季ここまでフル参戦している。出場権があるのだから出場するのは当然なのでは、と思うのだが必ずしもそうではないらしい。
「金田久美子選手、辻梨恵選手は、昨年のQTではそれぞれ87位、157位と奮いませんでした。なので、ここまで19戦のうち2人とも8戦しか出場していません。『出場していません』というより、出られなかったんです。でも実力者だから少ない試合数でポイントを稼げたので第2回リランキングまでの10試合は、まず間違いなく出場できます。2人ともシード権がほしいから少々無理をしても出続けるはずです。僕はここに問題があると思っているんです。
結論から言ってしまえば、シード選手をもっと増やすべきなんです。現在の50位までを60位までに変えるとか、あるいはステップアップツアー(※下部ツアー)との連携を図るとか。例えば、アメリカの女子ツアーは日本より試合数は少ないけど、シード選手は90人。なぜシード選手を増やすことが必要なのか? そうしないと選手は休めなくなってしまうんです。選手はシードが確定するまでとにかく試合に出続ける。不安だから。そうすると、選手の劣化が起きるんです。故障とかね。そして選手寿命も短くなってしまいかねない。それはよろしくない」
現在の女子ツアーの1試合あたりの出場選手は多くが108〜120人、最大級でも144人だ。その内訳はシード選手(準シード含む)55人、残りを主催者推薦、予選会通過者、過去の優勝者などで埋めていき、残りをリランキングリストの上位者から出場権を付与している。秋が深まってくると、日照時間の関係でトーナメントの出場人数は減少して100人以下になる。やはりプロである以上、試合に出なければしかたないので、シード権獲得に躍起になるのはよく理解できる。
「1試合ごとの出場選手数が増えて、シード枠も拡大して、リランキングも複数回実施する。そうなったら日本女子ツアーはもっとレベルアップして、もっともっと盛り上がると思いますよ」
確かに、タケ小山氏の指摘通りなのかもしれない。
取材・文/志沢 篤