ラグジュアリーなビジネス型のクラブが台頭
渋谷の再開発の影響で、10年以上にわたりナイトカルチャーを牽引したクラブの営業に終止符を打つことになったVISION事業部部長の乗田公平氏は、「これも時代の流れであり、いつまでもお店が続くわけではないと割り切っている」と前を向く。
「2015年末に閉店した代官山AIRしかり、2022年1月末で閉店した新木場ageHaしかり、いつまでもクラブが続くものではない。というのは、身に染みて感じていました。特に渋谷はトレンドの移り変わりが激しく、新たなカルチャーが生まれては消えることの繰り返しだと思っています。
一時期は、おしゃれして大箱に行くことで高揚感に浸るような楽しみ方が主流でしたが、最近の若年層はクラブの大小はあまり関係なく、言ってしまえば渋谷の路上飲みを楽しんでいる姿もよく目にします。
会社としても、『これまでのように大箱(キャパシティの大きなクラブ)を持つこと自体、時代に合わないのでは』という見方もあります。一方で、やはり海外のアーティストを招いたイベントを企画するには、それ相応の広さを持ったクラブが必要なんです。VISIONの跡を継ぐクラブを出したいという思いはあるものの、今はまだ渋谷の物件を探しているような状況ですね」
近年では、ラグジュアリーかつおしゃれな雰囲気を持つ小箱のDJバーが急増している。
従来のような、大箱に行って“クラブでしか味わえない高揚感”を求めるのではなく、“スマートにクラブのノリを楽しめる気軽さ”が顕在化していると考えられる。
また、昨今のクラブはVIPルームを中心としたフロア構成が中心となっており、純粋に音やカルチャー体感する場所というよりも、ビジネスを重視したクラブが多い。
だが、VISIONはこうしたトレンドに迎合せず、「音楽やアートといった要素を取り入れたカルチャーを発信する」というこれまで培ってきた“らしさ”の部分での営業展開を模索し、その継承にふさわしい立地を求めている。