霞が関の職員たちもー
本作には教科書に関して熱く語る政治家や学者らが次々と登場します。その語り口は極めてエネルギッシュなのですが、観終わった印象として背筋が凍る「政治ホラー」と評する方が少なくなく、これぞ納涼にピッタリと冗談めかしてSNSで発信する人もいます。
公開前から現役教員や教員OBたちが劇場へ足を運んでくれるだろうと思っていましたが、社会科の教師だと名乗って自身の苦い体験を語ってくれる人も多くおられ、期待した通りだったと思います。意外だったのは、文科省や内閣府の職員たちもサイン会に並んで私に身分を明かしてくれることでした。
菅義偉前総理のお膝元、神奈川県の横浜シネマリンは、舞台挨拶があったその日、当日券も完売してお客さんが溢れました。10人ほどが入場できず帰られたそうです。劇場支配人は久しぶりの満員御礼だと顔をほころばせて報告してくださり、私は誇らしい気持ちとがっかりして帰ったお客さんへの申し訳なさとで心中が揺れ動きます。
その会場での上映後、ひとりの女性が、わざわざ身分証のカードを示して「文科省に勤務しています。映画とてもよかったです」と話してくれたのです。
「えっ? 身分を明かして大丈夫なんですか?」と私が聞くと、にっこり笑顔を浮かべてパンフレットにサインを求めてくださったので、これには驚きました。確かに政治圧力は文科省をも覆っています。政治家の顔色をうかがう文科省上層部によって職員が被害を被っている側面があるのです。