ラテ欄でアピールするためのテクニック

では、そもそもなぜ「!」をつけるのか。それは番組タイトルを目立たせるためだ。そして番組タイトルが最も目立つ場所はどこか? それは番組表、つまり新聞で言うところのラテ欄である。

ひと頃、2時間ドラマでやたら長いタイトルをつけていた時期があった。
「2時間ドラマ 長いタイトル」で検索すれば腐るほど出てくるが、例えば『温泉(秘)大作戦!南部鉄器の美人職人と美肌効果の露天風呂!10年前に死んだはずの恋人が帰ってきた!?八幡平の大自然と秘湯をめぐる連続殺人の謎』(ABCテレビ)みたいな感じである。

これはひとえに番組表で目立つための作戦だ。今でも野球中継などでラテ欄に縦読みを仕掛けるといったことを行うが、この限られた文字数の欄でどう目立つかが勝負なのだ。

その中で「!」は目を引くアクセントにもなるし、時にはギュッと詰まってしまう文字を離す句読点的役割も果たす。『投稿!特ホウ王国』(日本テレビ)という番組名で「投稿!」にする必然性はなさそうに見えるが、これが「投稿特ホウ王国」だとちょっと窮屈だ。

このように番組表で重要な役割を果たしている「!」。しかし、今、その番組表自体の重要性が揺らぎつつある。

いる? いらない? テレビ番組名の「!」多すぎ現象を考察する_1

若者世代はサムネを重視するが…

今年の正月にNHKで放送された『あたらしいテレビ』で若者世代から出てきた「番組表って見にくくない? YouTubeはサムネがあるから」「文字情報は訴求力なくない?」という意見にハッとさせられた。

テレビをずっと見てきた世代は、新聞のラテ欄のインターフェースに慣れている。なので、テレビでも番組表ボタンを押せば新聞のラテ欄っぽい表示が出てくるし、Yahoo!のテレビ欄だってまだそうだ。

しかし、YouTubeで動画を見慣れている世代にとっては目立つサムネの方が重要で、いくらインパクトのある文字が躍っていたところでアクセスしようとは思わない。

現にTVerなどは、どんどん動画サービスっぽいユーザーインターフェースになってきており、各局とも再生回数を増やすためにサムネに力を入れている。かつては毎回同じロゴだった番組も、多くが回ごとに異なるサムネを作っている。

そんな状況において「!」の果たす役割は変わっていくのだろうか。

実際のところ、冒頭の『アルコ&ピースのほんの気持ちですが!』だけでなく『ラヴィット!』(TBS)だって『プレバト!!』(MBS)だって「!」がついている。『新婚さんいらっしゃい!』(ABCテレビ)だって現役だ。今のところはまだまだ「!」の地位は安泰のように見える。

しかし、テレビのあり方自体が変わっていき、世の中の多くの人が今のスタイルの番組表を必要としなくなった時、どうなるのだろう。

今後もしかしたら時代の流れとともになくなっていくかもしれないものとして、密かにウォッチしていきたいと思う。

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文/前川ヤスタカ イラスト/Rica 編集協力/萩原圭太