画面越しに良質なアイデアは出てこないという事実
3つ目がイノベーションの創出だ。
都内の大手広告代理店で働く40代の管理職は「個人としては在宅勤務OKはありがたい」としつつも、「部内の人材育成においては在宅勤務はデメリットしかない」と言い切る。組織と人材の成長にとって対面によるコミュニケーションは必須のものなのだ。結果としてコミュニケーションは、新たなアイデアや競争力の強い商品・サービスを生み出す原動力となる。
2022年に「Nature」に掲載された論文では、リモートワークが独創的なアイデアの創出を阻害することが示されている。各国の様々な企業の従業員に対して2人1組で新しい商品用途などを考えさせたところ、ビデオ会議のペアは、対面のペアより創造的なアイデアの生成数が少ないという結果が出たのだ。
ビデオ会議は対話者を画面に集中させることで認知を狭めてしまい、アイデアの創出が妨げられることが示唆されたという。
Amazonが原則週5日出社へ移行するに際し、アンディ・ジャシーCEOは「発明し、協力し、互いに十分なつながりを持つことができるようにする」とコメントした。
GMOの熊谷氏もXにて「人類最大の産業革命の真っ只中」「負ける要素は排除する」と記した。イノベーションを起こして競争力を高めようとしているようにも受け取れる。在宅勤務を廃止してイノベーション創出の加速に期待している経営者は少なくない。
経営者や管理職は在宅勤務の廃止により、会議などの時間を多く設けがちである。その際に気をつけるべきポイントは、生産性を下げない配慮をすること、そしてイノベーションを創出するにあたっての従業員の役割を明確にすることにありそうだ。
出社か在宅かという二項対立ではなく、「生産性」「エンゲージメント」「イノベーション」の3つをどう両立させるか。その視点を欠いたまま、流行に合わせて制度だけを変更することが、企業にとって最も大きなリスクと言えるのではないだろうか。
取材・文/不破聡













