小選挙区制が失わせたもの
林は小選挙区比例代表制の現在の選挙制度にも違和感を覚えているようだ。
「衆議院の中選挙区では個人個人のサービス合戦になるけれど、小選挙区時代の今は党として政策を訴えて闘う。だから有権者に候補者個人の名前を知られなくてもいいし、実際、有権者が名前を覚えていないケースも耳にします。
小選挙区制は政権交代を前提としている選挙制度ですが、それができるかどうかは別として、30年もやっていますから検証すべき時期に来ているといえるでしょう。
以前は私はそこまでの発言に留めてきました。ですが、昨年の総裁選挙では思い切って中選挙区制度に戻すべきだとハッキリ言いました。現状では選挙で議席を確保しながら、自民党の中で競い合って切磋琢磨する場面がなくなっていますから」
どのように国の舵を切るのか、という大局観のある大物が自民党にいなくなり、身の回りで起きる狭い範囲の諸事の対応に追われる小物ばかりが増えている。それは政治の世界に限った現象ではない。しかし政権政党がそれでは国の先行きが危うい。
「自民党でいえば、部会が議員を育ててきました。部会はOJT(On-The-Job Training)の場であり、私などが自民党に入った頃は、先輩議員が何を言っているのか、言葉の意味すらわからなかった。だから勉強しなければならない。若手にとっては部会に出ること自体が OJT でした。
今それがないとはいいませんが、減ったのはたしかでしょう。部会で揉めに揉め、最終的に意見がまとまっていく。稲田さんの発言していた再審法の改正問題のように、その現場を自分自身の目で見ることが大事なんです」
林は困ったときに頼めば対処できる「政界の119番」と呼ばれる。それほど多くの政策に通じていると評価される誉め言葉に違いない。かつての自民党には政策通を育む土壌があったのだろうが、今は勝手が違う。自民党が変質し始めた時期は、まさに小選挙区制の導入という選挙制度改革と重なる。













