口コミをチェックして常に味の改善を続ける
『芽衣や』には、日本の立ち食いそばだけではないメニューもある。
ミャンマー風の揚げ豆腐「トーフジョー」だ。
ゲソ天、紅しょうがとり天に続いて、店で3番目に売れているという。ミャンマーの食べ物を、日本の客が「好き」と言ってくれることが、メイさんは嬉しいと話す。
なぜ、立ち食いそば店でミャンマー料理を出すのか。
「日本の人は、ミャンマーのことをあまり知らないと思うんです。いまミャンマーはクーデターや内戦の影響で、とても厳しい状況にあります。故郷を追われ、安心して暮らせない人たちもたくさんいます。だから、自分のお店を作るなら、ミャンマー料理も少し出して、ミャンマーのことを知ってもらえたらと思いました」
メイさんは次のメニューを考えている。
ミャンマー風のまぜそば。ミャンマー料理を具材にしたおにぎり。そば屋としての形を守りながら、そこに少しずつ母国の味を入れていく。たまに、常連の人に食べてもらい、意見をもらうこともあるという。
『芽衣や』には現在、アルバイトが2人いる。そのうちのひとりは、来日して1年ほどの17歳のミャンマー人だという。
「私たちの時代のミャンマーでは、大学を卒業するまで仕事やアルバイトをほとんどしない人も多かったんです。自分で食べたお皿も、自分で洗わない人が多い。親に甘えているというか。日本の17歳は大人っぽいですけど、ミャンマーの17歳は、まだ子どもっぽいところがあると私は思うんですね。
日本語が十分にわからない部分もあるので、ミャンマー語で仕事を教えています。この店で最初に仕事を覚えれば、次にほかの仕事をするときにも、この経験を活かしていけると思っています」
ミャンマー出身の夫婦が日本の立ち食いそばを受け継ぎ、その店で、来日して間もない若者が日本で働くことを覚えていく。
近年は、物価高や後継者不足で、立ち食いそば店が少しずつ姿を消している。安く、早く、気軽に食べられる一杯は、実は多くの負担と努力の上に成り立っている。
そんな中、メイさん自身には迷いもあったという。
「日本の文化のお店だから、外国人がそれをやると、日本の人はどう思うのかな、という迷いはありました。なので、『立ち食いそば屋をしてくれて嬉しい』という言葉を聞いて、私たちも嬉しいです」
最後に、まだ『芽衣や』に来たことがない人に向けて、店のアピールポイントを聞いた。
「Googleなどの口コミはよく見ています。好きな人は好きと言ってくれるし、あまり好きじゃない人もいます。『旨味が弱い』と書かれていたこともありました。どうすればそこを直せるのかを常に考えています。
お客さんの意見は大事にして、できるだけ直せるところは直しています。だから、『味がおいしいから来てください』とは、軽い気持ちでは言えないです。でも、ミャンマー豆腐は他のお店にはあまりないので、食べてみてほしいですね!」
立ち食いそばとの偶然の出会いから始まり、ついに自分たちの店を持つまでになったメイさんとアウンさん。日本の立ち食いそば文化は、このように誰かに受け継がれ、少しずつ変わりながら続いていく。『芽衣や』は、そのひとつの姿なのだろう。
取材・文・撮影/ライター神山















