日本の飲食店で感動した言葉

「立ち食いそばをやるなら、駅に近いほうがいいじゃないですか。人通りも見ましたし、その街にあるお店も見ました。お客さんがあまりいないかなとか、立ち食いそばを食べない街かなとか、いろいろ考えました。たとえば池袋は、韓国料理とか、ちょっと贅沢なものを食べる人が多いのかななど……」

駅からの距離、人通り、街の雰囲気、物件の審査。さまざまな条件を見ながら、最終的にたどり着いたのが小岩だった。

そして2025年12月20日、『芽衣や』はオープンした。

下町の立ち食いそばでは、ゲソ天は定番中の定番。『芽衣や』のゲソ天は、歯ごたえのあるゲソがゴロッと入っている。そばと一緒に食べると満足感が大きい。

名物の「特大イカゲソ」が乗った天ぷらそば
名物の「特大イカゲソ」が乗った天ぷらそば

「仕入れ値は高いんですけど、やっぱりゲソは人気があります。夜に来て、ゲソがないなら帰ります、というお客さんもいるんです。だから、やっぱりゲソはないとダメですね」

天ぷら作りは、メイさんたちにとって簡単ではなかった。

アウンさんは立ち食いそば店で働いた経験があったが、メイさんやほかのスタッフにとって、天ぷらを揚げるのは初めてだった。

「みんな初めてなので、わからないんです。主人がやり方を教えてくれたんですけど、焦げちゃったりすることもありました」

そこでアウンさんは、感覚だけで教えるのではなく、数字で伝えるようにした。イカゲソは何個、天ぷら粉は何グラム、というように測って、マニュアルを作り、店の看板メニューとなった。

ケースに並ぶ天ぷら
ケースに並ぶ天ぷら

だが、営業は順調なことばかりではない。オープンからしばらく売り上げは上がっていったが、2026年2月に最寄りの駅ナカに有名なそば店がオープンすると、売り上げは一時落ち込んだ。

それでも常連は少しずつ増えている。ポイントカードもあり、アウンさんは顔を見れば常連客がわかるという。

客とのやりとりの中で、メイさんが印象に残っている言葉がある。

「ミャンマーでは、食べ終わったあとに何も言わずに帰ることも多いんです。でも日本では、お客さんが『ごちそうさまでした』と言って帰る。それがすごく素敵な言葉だと思いました。いまでは私たちも、外で食事をしたときには、必ず『ごちそうさまでした』と言うようにしています」