プーチンにとって最も厄介な反乱が、足元から起きている

国外に拠点を移した独立系メディアと、数字を誤魔化せない通信社が、その現実を淡々と報じ続けている。6月8日深夜、ついにエネルギー省自身が、敵の航空攻撃の急増によって南部の一部で燃料供給に困難が生じていると公式に認めた。虚構のナラティブが、物質的な現実に敗北した瞬間である。

そして、プーチンにとって最も厄介な反乱が、足元から起きている。これまで戦争を熱烈に支持してきたZブロガー(親露派のインフルエンサー)たち、登録者150万人を超えるRybarをはじめとする軍事インフルエンサーたちが、政権に公然と牙を剥き始めた。

いよいよ追い詰められたプーチン大統領
いよいよ追い詰められたプーチン大統領
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彼らの怒りの矛先は、最重要拠点の防空網をやすやすと突破された軍指導部であり、民間の防空チームの足を引っ張る官僚主義であり、そして国家のインフラが次々と燃えているのにウクライナを「テロリスト」と呼ぶだけのクレムリンの弱腰な広報である。

ここで取り違えてはならないことがある。

Zブロガーは「戦争をやめろ」とは言っていない。「もっと冷酷に、もっと有能に戦え」と要求しているのだ。リベラルな反戦派よりも、この声のほうがはるかに危険である。

なぜなら、それは政権に対して際限のないエスカレーションを迫る圧力になるからだ。実際、プーチンは表向き強気を崩さず、6月12日の演説でAIを統合したドローン技術を称賛してみせた。

その裏で、新型中距離弾道ミサイル「オレシュニク」の発射準備が進められていると報じられている。通常兵器での防空に失敗した政権が、非対称の力を見せつけることで国内の不満をなだめようとする焦りの表れだ。

プーチンは、二つの綱の上を同時に渡っている

Zブロガーたちの分析は冷静である。ウクライナは低高度空域の支配権を確立し、ロシア軍の前線は、進もうとすれば即座に発見され排除される「キルゾーン」と化した。

空のコントロールを奪還しない限り、追加で30万人を動員したところで、新たな犠牲者をキルゾーンに放り込むだけだとZブロガーは言う。

もう底だと思うたびに、翌日にはさらに下がっている——Zブロガーが共有しているのは、そういう出口のない感覚である。

プーチンは、二つの綱の上を同時に渡っている。エリートの離反を防ぐための強権的な締め付けと、愛国派の不満を鎮めるための軍事的エスカレーションだ。

どちらに足を滑らせても、転落する。モスクワの空を覆うドローンの影は、戦車の損害や領土の取り合いといった次元の話ではない。

プーチン自身が始めた戦争が、いまや自国民の日常を、そして政権を支えてきた社会契約そのものを、内側から食い破り始めているという現実を映し出している。

追い込んでいるのは、ゼレンスキーではない。プーチンが点けた火が、彼の足元に回ってきただけのことだ。

文/小倉健一