ロシア政府の対応にみる、かつてない追い込まれぶり
その結果が、産油国の燃料危機だ。全国2万9000カ所の給油所のうち、4分の1にあたる7000カ所以上で配給制が敷かれた。
タトネフチは1台あたりガソリン20~30リットルに制限し、ロスネフチは90リットルの上限を設け、携行缶への販売を全面的に禁じた。
占領下のクリミアでは現金での自由販売が止まり、運転手はクーポンやQRコードを示してようやく20リットルを手にする。ナンバープレートは公務員に記録され、燃料トラックを撮影してSNSに上げる行為は「破壊工作への加担」として刑事罰の対象になった。
エネルギーを外交の武器として振りかざしてきた国家が、自国民の給油を監視し、取り締まる側に回っている。
ロシア政府の対応を見れば、追い込まれぶりは隠しようがない。今年11月末まで、航空燃料の輸出が全面的に禁止された。国内で売るガソリンの硫黄分の上限は、欧州や中国の基準の15倍にあたる150ppmまで引き上げられた。ディーゼルに至っては35倍である。
質の悪い燃料を使うということは大気汚染が発生するわけで、国民の健康を犠牲にしてでも、製油所に量を吐き出させるしかないところまで追い詰められている。
テレビの中のロシアは何事もなかったかのような平常運転
そして極めつきが、アジアからの海路によるガソリンの緊急輸入だ。世界有数の石油輸出国が、自国の不足を西側の港経由の輸入で埋めている。同盟国のベラルーシやカザフスタンにも、ロシアの巨大な穴を埋める余力はない。
それでも、テレビの中のロシアは何事もなかったかのような平常運転だ。チャンネル1もロシア1もNTVも、開戦以来最大のロシア国内への攻撃に割いた時間は全体で1分に満たなかった。
朝のニュースでは、4つの主要ニュースからモスクワ攻撃が外され、後半でアナウンサーが短く読み上げただけだった。正午になると、各局はモスクワの被害を掘り下げる代わりに、ロシア軍がキーウやハルキウに加えた報復攻撃の成果を声高に伝えた。
タス通信は「500機以上を迎撃した」という数字を見出しに掲げ、優秀な防空システムがテロを未然に防いだという勝利の物語を組み立てた。製油所の火災は「直ちに鎮火された」とされた。
プーチンにとって頭が痛い問題は、そんな物語には、もはや誰も騙されないことだ。15キロ先で黒煙が上がり、空港が閉鎖され、ガソリンスタンドに長い列ができている。













