日本初のクラウドファンディング
一審の有罪判決が報じられると、そら見たことかと言わんばかりに一斉にバッシングが始まった。弁護団の主張は無理筋だ、と公然と批判する法律家もいた。
それまで熱心に取材していたメディアも潮が引くようにいなくなった。しかしそんなことよりも、あの時の被告人、そして傍聴席の彫師たちの失望と不安の表情が頭から離れなかった。絶対に、有罪判決をくつがえさなくてはならない。
私はずっと、控訴審でやるべきことを考えていた。彫師の職業選択の自由や表現の自由が、あまりにもあっさりと退けられたことに怒りを感じ、憲法で保障された彼らの権利を、もっと強く、説得的に主張しなくてはならないと思った。
そのためには憲法学者に協力を求める必要がある。医師法の研究者らを巻き込んで、「医行為」についての通説的な解釈を変更する必要もあった。彫師に特化したライセンスや、衛生管理に関する講習を実施している諸外国の制度についても立証したい。そして、それらをするにはとにもかくにもお金が必要だった。
事件を受任してからの2年間、全国の彫師たちが寄付を集め、弁護活動の費用を捻出してくれたが、それも底をついていた。どうにかして、もっと寄付を集められないか。ネットで情報を探していた時、クラウドファンディングで訴訟費用を集めるイギリスのウェブプラットフォーム「クラウドジャスティス」が、アメリカで事業を開始するに当たって200万ドルを調達したという記事を発見した。
クラウドジャスティスのホームページを見ると、政治、環境、移民、教育、障害、健康、雇用などさまざまな人権に関する訴訟が掲載されていて、それぞれのケースで、市民から多くの寄付を集めていた。
これだ。これしかない。
ところが、日本のクラウドファンディングのプラットフォームを検索してみても、訴訟費用を募っているケースは一つも見つからなかった。
なぜか日本では過去に例がない。なぜだろう。依頼者でない人から裁判の費用を支払ってもらうことは、弁護士法に違反するのだろうか。違法でないとしても、弁護士倫理上の問題になるだろうか。弁護士がネットで金集めをするなんて、という批判はあるかもしれない。保守的な弁護士業界ではあり得ることだった。
しかし、ほかに手段はない。有罪判決をくつがえすためにはお金が必要だ。違法でない限り、私は何でもやると決めた。













