精神の病を予防しない現代人

『ウォールデン 森の生活』を書いたヘンリー・デイヴィッド・ソロー。自ら森に入り、小屋を建て、自然人の暮らしをしたソローの本には、次のようなことが書かれている。

「私たちは精神のための滋養は等閑に付すが、肉体のための滋養や肉体的な病気には費用を惜しまない」

全く同感である。私たちは体にいいものを常に意識して食べるように努力する。私は最近、毎日1杯のキャロットジュースを欠かさず飲んでいる。病気になれば、その病気を治すものを食べる。喉風邪を引いたら生姜茶を飲み、下まぶたがピクピク痙攣したら「マグネシウムが多い食べ物」を検索して唐辛子の葉、ほうれん草、しいたけなどを食べる。

『ウォールデン 森の生活 (上) 』(2016年、小学館文庫)
『ウォールデン 森の生活 (上) 』(2016年、小学館文庫)
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そこで考えてほしいのだが、私たちは精神的な病を予防するために、体の健康と同じほど、いやそれ以上に何かをしているだろうか。おそらく何もしていない。体よりも精神がつらい人のほうがずっと多いのに―。憂うつ症、パニック障害、人格障害、摂食障害といった精神疾患が現れると病院に行って治療を受け、薬を服用するけれど、予防しようとしないのだ。

でも、精神疾患を予防できる確かな方法は存在する。古典を読むことだ。

私たちは体にいい食べ物をどうやって知ったのだろうか? 先祖たちが実際に食べて、いいものはいい、悪いものは悪いと、数百、数千年かけて割り出した結果である。私たちが今精神的に苦痛を受けている数々の問題は、今日初めて起こったわけではない。人間の本質は変わることがないため、人間は昔も今も同じことで悩み、苦しむ。 

精神的な苦痛を経験して気づきを得た先達が、後世の人々に同じ苦痛を味わわせないように書いたものが、古典として現在も読み継がれている書物なのだ。