まずは自分が元気じゃないと人も助けられない

──更年期障害の漢方薬として加味逍遙散(かみしょうようさん)が有名ですが、患者から喜ばれた別の漢方薬もあるとか。

加味逍遙散は、ストレスやイライラを外に吐き出せる人にとても向いています。一方で、空気を読みすぎたり、言いたいことを我慢したり、不安や落ち込みや疲弊感が強く、ストレスを溜め込んでしまう人には柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)があります。

──確かに、今の更年期世代は、仕事や子育て、介護など、背負うものや責任が多く、精神的な疲れを抱えている人が多いと感じます。

ストレス過多になる要因が多いのに、どうしても自分のことは後回しにしてしまいがちですよね。周りに気を遣いすぎている。それが腎に負担をかけ、「氣」が減ってきてしまうんです。

「夕食後に倒れ込むように寝てしまうのは“氣絶病”?」 漢方薬剤師・樫出恒代が語る、更年期世代に必要な“自分ファースト”養生_2

──夕飯を食べたら、気絶をしたかのようにその場で寝てしまうことを樫出さんは「氣絶病」と定義されていますが、これも更年期障害に多い症状のひとつだとか

職場で気を遣って帰ってきて、家でご飯を食べてほっとしたときにソファで寝てしまうのは、「氣」が「絶してしまう」ということです。例えば電車に乗っているときにバタッと寝てしまうのも氣絶です。それだけ気を遣ってしまう方が多いんです。

夫や子供は二番目でいいんです。まずは自分が元気じゃないと人も助けられないし、仕事もできません。特に40代半ばを過ぎたら腎のケアが大切です。気を遣わずに、漢方で「氣」を効かせましょう。

──漢方を試す場合、どのくらいの期間試してみるべきですか?

体質を変えるための漢方の場合、4ヶ月飲み続けると体質の変化がわかります。まずは2週間試すと何かしらの変化が感じられるはずです。

──飲み方のコツはありますか?

まずは体を温めること。そのためには、1包をお湯に溶かして飲んでください。粉のまま水で飲むよりも、吸収がまず違いますし、体全体も温まり、相乗効果が発揮されます。その後、カーディガンを羽織ったり、カイロを貼るなどしてしっかり体を温めましょう。漢方がより効くように手伝ってあげることも大切です。

液体タイプの葛根湯もありますが、冷蔵庫に入れていたものをそのまま飲んでも、残念ながらあまり効き目を発揮できません。常温に戻して、1対1のお湯割りで飲んでください。ぜひ、飲み方による効きの違いを試してほしいです。

──では、自分に合う漢方薬の選び方は?

まずは、今の自分を知ること。何が辛いのか、どう辛いのか。プロに相談するのが一番早いですね。あとはお湯に溶かして飲んだときに、おいしく感じる、お湯のように抵抗なく飲めるのは身体が喜んでいると考えて良いと思います。胃もたれや下痢をしてしまう場合もすぐにやめましょう。美味しくなくても「なんか飲みたい」と思う薬はあります。自分の感覚が何よりも大切です。

──自分にとって心地がいいこと、無理をしないことが大切なんですね。

自分を慈しみ、大事にすること、愛することが「漢方養生」の考え方です。ゆるく気持ちよく、自分ファーストで柔軟にいることが、若さの維持や病気の予防にもなると考えています。

※編集部注:本文中で紹介している漢方薬は、症状や体質、既往歴、併用薬によって適否が異なります。自己判断での服用や長期使用は避け、医師・薬剤師・登録販売者に相談してください。症状が続く場合や強い場合は、医療機関を受診してください。

おとなのご自愛 漢方養生
樫出恒代
おとなのご自愛 漢方養生
1760円(税込)
四六判/224ページ
ISBN: 9784083331800
冷え、肌あれ、更年期太り、めまい、動悸、不眠……。 理由ははっきりしないけれど、確かに感じている不調。 それでも日々は続いていくから、つい後回しにしてしまう――。 本書は、そんな“大人の違和感”にそっと寄り添う一冊です。 30年以上漢方に携わってきた著者が紹介するのは、決して特別なことではありません。 食べること、眠ること、呼吸すること。 日々の当たり前を、少し意識するだけ。 ツボ押しや食養生など、今日から始められる養生法が、 心も身体も“高め安定”に導いてくれます。 緊張しやすい、夜中に目が覚める、もの忘れが気になる。 そんな変化も「年齢のせい」で終わらせない。 後回しになってしまいがちな「自分」をもっと大切にするための、 実践的な漢方養生ガイドです。 ________________________________________ 【著者略歴】 樫出恒代 (かしで・ひさよ) 漢方薬剤師・漢方ライフクリエーター。 「Kaon漢方アカデミー」主宰、 「漢方カウンセリングルームKaon」、「漢方くすりのヒロヤ」代表。  新潟薬科大学薬学部卒業。 一人ひとりの心と身体に丁寧に向き合う独自メソッド〈バイタルフットヒーリング〉を取り入れた漢方カウンセリングを実践。東京・築地、新潟を拠点とするほか、「女性ライフクリニック銀座」にて漢方外来を担当している。また、漢方の魅力を伝える人材育成にも力を注ぎ、東京、京都、新潟など各地での漢方アカデミー開講や漢方フェスを通じて普及活動を展開。「一家にひとり漢方アドバイザーを」という想いのもと、漢方を日常に生かし、自分らしく心地よく生きる力を届けている。 ________________________________________ 目次 (抜粋) ・「漢方薬は効かない」と思っている方に知ってほしいこと ・食後にぱたっと寝てしまう。それ、「氣絶病」です ・夜中に目が覚めてしまう、その原因は? ・頭痛持ちさんに知ってほしいこと ・緊張しやすい人に伝えたい、3つの知恵 ・「忘れっぽい」にも、役立つ漢方があります! ・「明け方に足がつる」悩みに三つ星の養生を ________________________________________
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