有権者は政治家に対して、どう異議申し立てすればよいのか?
西村 去年3月の一時凍結後に、当事者の声をあまりにも聞いてなさすぎた反省を経て、厚生労働省の社会保障審議会医療保険部会の下に「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」が作られて、全がん連とJPAの代表がそこに加わって議論が進んでいきました。
当事者を参画させるという最初のハードルは超えたのですが、じつはその次に、当事者が入ったことで「話を聞きましたよ」という体で議論が進められてしまう、というトラップが待っていました。
畠山 アリバイ的に使われてしまう。
西村 そうです。今回〈見直し〉案の月額上限額引き上げがまさにそうなんですけれども、国会答弁で上野(賢一郎)厚労相や高市首相は常に「ご議論いただいた」と言うわけです。専門委員会に参加していた全がん連やJPAの代表者が、国会の参考人や公述人として「議論は充分なものではなかった」「新たな自己負担上限額はあくまで金額を提示されただけ」と発言しても、高市首相や上野厚労相はまるで錦の御旗のように「専門委員会でご議論いただきました」と平然と言うわけです。
畠山 出席していただけなのに。
西村 非常にずるいですよね。高額療養費の「高額」さに苦しんでいる制度利用者は現状でも非常に多いので、全がん連とJPAの代表者が専門委員会で懸命に訴えた結果、1年の総支払い額に限度を設ける年間上限額の新設や、長期利用者の1ヶ月あたり支払い額をさらに低くする多数回該当という制度の金額を据え置きにすることが、今回の〈見直し〉案には盛り込まれています。これは確かに前進ではあるんですよ。
だけどそれはそれとして、1ヶ月あたりの支払い上限額をさらに上げているから、現行制度よりも負担が増えて苦しくなる人がたくさん出てくることが今の問題なんです。にもかかわらず、高市首相や上野厚労相は国会で何を質問されても「当事者団体も参画した専門委員会でご議論いただきました。年間上限を導入して多数回該当も据え置きにします。だから充分な配慮をしています」ということばかり言うんです。
1ヶ月あたりの自己負担上限引き上げなど様々な問題を野党議員が指摘しても、そこに対する答えは「繰り返しになりますが、患者団体の方も参画した専門委員会でご議論いただき、年間上限額の新設や多数回該当の据え置きで充分な配慮した案になっています」と同じことばかり繰り返すわけです。
畠山 見栄えの良い部分だけを言って、「ここの見栄えをよくしたからいいでしょう」と押し切ろうとしているわけですね。
西村 そういうことですね。あまりに同じことばかり繰り返すから、次に同じ答弁をしたら床が開いて下に落ちるとか上から水が降ってくるとか、そんなふうになればいいのにと思いながら見ていました。
畠山 それだと兵庫県庁なんかも大変なことになっちゃうと思いますけど(笑)。
西村 そのように聞く耳を持たない政権側の態度に対して、いったいどんな異議申し立てができるのだろうか、と考えると非常に歯がゆいし虚しいですね。先ほどの話にあった、選挙の候補者に直接声をかける方法は非常に有効だと思うんですが、選挙期間ではない時期にたとえば自分の地元選挙区の議員に話しかけたとして、どれほど効果があるのだろう、どれくらい話を聞いてくれるものなんでしょう?
畠山 それは本当に人と事務所によると思いますね。その政治家に直接連絡を取れる関係性があれば、多分ものすごく話が早いと思うんですけれども。
西村 それだと誰も苦労はしない。
畠山 そうなんですよね。だからそこで、自分が住んでいる選挙区から選出されている国会議員は誰なんだろうということをまず思い出してもらって、その事務所に「こういうテーマについてぜひ考えてもらいたいから、話を聞いてもらえませんか」というアプローチを事務所にしてみる。その時に反応が良くて、「本人はいないけど秘書が聞きます」ということもあるでしょうし、「資料にしてまとめて持ってきていただければ本人に渡します」という対応もあるかもしれない。
そうやってまず連絡を取ってみることで、有権者の訴えかけにアンテナを張っている議員かどうかということが、最初の反応でわかるわけですよね。実際には「いや、うちはそういうことはやっていないから」という議員もいらっしゃるので、そういう場合は「この人は自分たちの力になってくれないんだな」という判断を次の投票行動で示せばいい。
実際には、地元議員に連絡をしている有権者ってほとんどいないんですよ。選挙で投票先を決める場合でも、「本人を見てから投票していますか?」と聞くと、見てから投票したという人は2割もいないくらい、圧倒的に本人を見ていないんです。だから僕は、政治家に話しかけるハードルを下げたいと思っていろんな人に話しかけているんですけれども、塩対応のところもあれば、あたたかい対応をしてくれるところもある。
本当に面白いですよ。選挙に当選するまで「あなたの話を聞きます」と言っていた人が、当選した途端に「いや、うちはそういう取材対応とかやってないから」と断る人もいる。もうあからさまに人間の素が出るんですよ。声をかけて門前払いをくらったときには、「この人は有権者と話す気がないから、次は絶対投票しないぞ」と確信を持つ判断材料にもなるので、気軽に声をかけて、その反応を自分の投票行動に生かしてほしいですね。














