選挙は意見を伝えるチャンス
畠山 候補者は有権者の声を聞くことが仕事なので、本来ならじっくりと時間を取ってもらいたいんですけれども、選挙期間中だとどうしても時間は限られてしまいます。
でも、選挙期間は一番陳情しやすいというか、有権者の意見を候補者に伝えるチャンスではあるんですよね。政治家は普段はなかなか外へ出てこないけれども、選挙の時は有権者の前に顔を出して、自分がどういう人間でどういうことをやろうとしているかを見せないと票になりません。だから、何年かに1回かもしれないけれども選挙の時は必ず出てくる。しかも有権者の声を聞くという建前上、「声を聞かないと大変なことになるぞ」というプレッシャーがあると聞く耳を持ちやすいし、有権者からの呼びかけにも答えざるを得ない。だから、選挙の時に自分たちの問題を候補者に端的にわかりやすく伝えることはすごく大事だし、効果的だと思います。
皆さんの中には政治家や候補者はすごく勉強して知識も豊富だと思っている方もいらっしゃると思うんですが、実は全然そんなことないです。この問題は政治家なら当然知っているだろうと思って話してみたら「えっ、そんなことがあるんですか」と驚かれて、逆に当事者のほうがびっくりする、みたいなやり取りは本当にいっぱいあります。だから、この問題は社会にとって大切で解決しなければならない課題だ、と認知してもらうための働きかけからまず始めなきゃいけない、というのが現実です。
つまり、政治家なら勉強しているはずだし何でも知っている、と思うのは間違いで、「あの人は知らないかもしれないから伝えよう」「こうやって理解してもらおう」と働きかけることがとても大事です。
話しかけた候補者がその問題について知っていたら、候補者にとって「やはりこの問題で実際に困っている人がいて、こうしてほしいという意見があるんだ」と確認する後押しになります。だから、これは切実な問題だから何とかしてください、と何回言ってもいいんですよ。いつも決まった人に発言を任せるのではなく、気づいた人が声を上げることで広がりができます。
そのような有権者からの提案や問いかけのコミュニケーションが日本では圧倒的に少ないし、それはすごくもったいないな、といろんな選挙の現場を見てきてつくづく思います。 そういう働きかけをしている人たちがまだまだ少ないことが、日本の民主主義や政治がひとりひとりの幸せを作れていない原因じゃないかと思います。
西村 日々の生活と政治が直結していないと言えばいいのか、皆の生活と政治家の活動が噛みあっていないように見えるんですよね。昔からよく言われることですが、テレビや新聞の中で行われている政治と自分たちの生活が、どうも乖離しているように見える。
畠山 選挙について高校などで講演をすることもあるんですが、「選挙の時は政治家がセミの幼虫みたいに何年かに1回の割合で外に出てくるから、その時に話しかけるのがチャンスだよ」という話をすると、「えっ、政治家に話しかけていいんですか!?」と本気で言われることがあるんです。政治家は話しかけてもいい存在だという認識がまず有権者にないことにむしろこっちはびっくりするわけです。
話しかければちゃんと言葉を返してくれるので、そういう自分の実例を踏まえながら、皆さんもぜひ声をかけてくださいね、というところから始めなければならないくらい、政治と有権者は距離が離れていることを痛感しますね。
西村 『黙殺』の頃から、それはずっとライフワークですもんね。
畠山 そうそう。話しかけると何が面白いかというと、すごく立派な人だと思っていた人がすごくつまらない人だったり、謎の人だなと思っていた人がものすごく真摯に深く物事を考えていて、新しいアイディアを持っていたりすることがわかるからです。
僕はどの選挙でも候補者全員にくまなく会うことを信条としていますが、「どうしてこのテーマを入れてくれなかったんですか」と訊ねると、「選挙公報はスペースが限られているので入れられなかったけれども、私はこの問題にはこう取り組もうと思っています」という答えが返ってきたりする。
マニフェストに入っていなくても、直接訊ねることで政治家の頭の中にずっと残って、当選した後にそれを議会の質問で取り上げて事態が動く、ということも当然あるでしょうし、その課題が世の中にシェアされることで、何年か後に解決されることもあるでしょう。
「あの時は箸にも棒にもかからないと世の中から言われた人が訴えていた政策が、今では堂々と世の中で認められて実現されているじゃないか」ということに、何回も出会っています。選挙で投票するだけじゃなくて、コミュニケーションをとって候補者に働きかけることは、自分が投票したくなる候補者になってもらうためにも大事なことだし、働きかけることで政治家が変わってくれることも見てきました。
高額療養費制度の問題について言えば、どのようなプロセスを踏むことによって、当事者の意見が反映されていないとんでもない案を押し戻して一時凍結させるに至ったのか、という具体的な例がこの本の中に書いてあるし、高額療養費制度以外でも、自分たちが抱えているテーマをどうすれば政治の場に反映してもらえるのかについて考える際の、参考にもなると思います。














