僕らの世代の考え方も怖がらずに伝えたい

野球のなかでも“スカウト”をテーマにする本作では、プロの道を目指す若い世代の苦悩が描かれる。木戸大聖や佐藤寛太など、若い世代の共演者が多いことから、ムロはある思いをもって撮影に挑んだという。

――再び郷原を演じるにあたって、準備やチャレンジをしたことはありますか。

役者には余計な演技をしちゃうタイプがいるんですよ、僕みたいな人です(笑)。余計なことをすると郷原から離れてしまうので、まず「思いつきの芝居はいらないぞ」と自分に言い聞かせる1週間がありました。それ以外では、前作を通した郷原でありたいので、改めて前作を見返して準備しました。

チャレンジということでは…そうですね、今回は郷原が選手に向けて発する言葉が前作より多いんです。労いの言葉だったり、鼓舞する言葉だったりがたくさん出てきます。その際に郷原としての説得力が出るよう準備をしました。セリフの言い回しというよりは、“思い”ですね。

実は、この作品は若い役者さんが多いですから、役者として、そして上の世代としての思いもお伝えさせていただくことが、自分のなかでの裏テーマだったんです。偉そうには聞こえるかもしれませんが、「こういう前例もあるんだぞ」というお芝居の仕方をお伝えしようと心掛けていました。

――役者としての思いを伝えたかったということですか。

そうですね。価値観や考え方、捉え方が多様化している時代ですので、若い世代の皆さんを否定するのではなく、僕らの世代の考え方も怖がらずに伝えたい。

今は何も言わない方がいいという考え方もありますが、それでも僕は言葉を選びながらでも伝えていくことが大事だと思っています。「じゃあこうならなければいいんだ」「こういう考え方はしない方がいいな」っていう思いが生まれてくれればいい。

若い役者だけじゃなくてスタッフさんにも伝えています。様々な“ハラスメント”という存在をしっかり理解しながら、それでも自分の良かったと思えた経験などは伝えていきたいなと思っております。老害にならないように(笑)。

ドラマにちなんでバットを握る動作をするムロツヨシ(撮影/廣瀬靖士)
ドラマにちなんでバットを握る動作をするムロツヨシ(撮影/廣瀬靖士)

――本作では選手に向けて素敵な言葉をたくさん送られていますが、ムロさんご自身に刺さったセリフはありますか。

一度プロの道をあきらめた選手に対して「這い上がって来い、そうしたら俺が光を当ててやる。階段をまた作ってやる」というセリフですね。ああいうことを言える男でありたい。やっぱり下の世代を引っ張ったり、場所を提供できるような男になりたい。大きいことを言いすぎちゃいけないですけど、それは目指していこうかなって今回改めて思いました。

あとは、プロの生活を終えてしまうかもしれないトライアウトの選手に対して、「よくやった。だから自分を貫き通せ」という言葉も刺さりました。自分もそう思うことはありますが、思うだけじゃなくて伝えていけたらいいなと。