「金太郎、けじめる。」(集英社文庫・コミック版9巻収録)

上司の顔にグーパンチ

会社で失敗した時、多くの人は小さくなる。頭を下げて、波風を立てず、できれば穏便に終わらせたいと思うものだ。だが、いったん辞表まで出して吹っ切れたサラリーマンは強い。失うものがなくなったとき、人は思いがけずまっすぐになる。

『サラリーマン金太郎』第90話は、サラリーマンの夢と憧れが詰まった回である。

この回で金太郎は、不倫スキャンダルの責任を取るため、会社の役員がたくさん集まっている株主総会の予行練習の場で、自分の辞表を貼り出す。なぜこの場で辞表を出すのか。その理由がこの直後にわかる。

金太郎は、自分をハメて貶め、相手の女性のことまで巻き込んだ元凶である大場部長に向かって、正面から顔面パンチを食らわせるのだ。

大場部長は金太郎の上司で、会社の後継者候補だった。だがそんなことは関係ない。自分の責任は自分で取る。自分の気持ちは自分のやり方でケリをつける。上司だろうと、気に入らないやつは殴る。辞表を出したサラリーマンだからこそできる、最高のやり返しである。

もちろん処分は重い。金太郎は降格処分を受け、1年間減俸、さらに子会社出向を命じられる。サラリーマンとして見れば大敗北だ。だが、それでも金太郎の顔は妙に生き生きとしている。自分の気持ちに嘘をつかず、最後に筋を通した男の顔だからだろう。

このように90話の『サラリーマン金太郎』には、現実世界ではなかなかすることができない、サラリーマンの夢が描かれている。ぜひ、金太郎のすがすがしい表情を漫画で読んでほしい。