戦争はしたくない反介入主義のリバタリアン系MAGA
反介入主義的な主張はワシントンD.C.では主流ではない。特にトランプ大統領によるMAGA運動が巨大化する前まではその勢力は極めて小さなものでしかなかった。
第一次トランプ政権初期に注目されたAmerica Firstは、この反介入主義のリバタリアン系勢力が伝統的に用いてきた用語である。
第一次政権時代のトランプ大統領は外交安全保障スタッフを揃えることができなかったので、ワシントンD.C.ではリバタリアン系の外交安全保障専門家たちに頼らざるを得なかった。
彼らの発想の特徴は米国が世界から軍事的に手を引くにあたって、ライバルであるロシアとの一定のすり合わせを必要とするというものだ。
筆者は2016年にワシントンD.C.近郊に住居を構えていたが、リバタリアン系の大物であるジョージ・オニール氏に会うことができた。同氏はロックフェラー4代目として知られた人物であり、トランプ大統領の支持者として噂された人物であった。
彼の持論は「世界から戦争と汚職をなくしたい」というもの。その後、彼が支援するリバタリアン保守系の新聞社などにも訪問した。この新聞社は今でも反イラン攻撃の主張を展開しているメディアである。
MAGAは依然としてトランプ大統領を中心にまとまり続けている
トランプ大統領が親露であると揶揄される背景には、この当時からの人脈的な繋がりが影響しているものと推測される。
MAGAは初期段階で入ってきたリバタリアン系とその後に入ってきたトランプ信者の二重構造の形となっている。今回、イラン攻撃に反対しているオピニオンリーダーは前者であり、イラン攻撃を肯定しているトランプ信者は後者である。
したがって、この二重構造を理解していないと、MAGAの動向について見誤ることになるだろう。リベラルメディアはMAGAへの解像度が低く、メディア空間では対立が強調される一方、世論調査では圧倒的支持が確認されるというギャップが生じている。
今回の事例は、MAGAムーブメントの本質を示す重要なケースである。すなわち、MAGAは単一のイデオロギーではなく、「America First」と「トランプ個人への忠誠」という二つの軸が併存する複合的な政治運動である。
この二軸が時に矛盾し、今回のような政策決定を契機に内部緊張が表面化する。しかし、政治的影響力という観点では、大衆層の支持が圧倒的である以上、MAGAは依然としてトランプ大統領を中心にまとまり続けているのだ。
文/渡瀬裕哉 写真/shutterstock













