「あかん阪神優勝してまう」

支援的ユーモアの目的は、自身が直面したピンチや嫌な出来事などを、あえて「笑い」に転換することで、自分や他者(友人など)を励ますこと。実際にもこうした行為によって、直面した問題・課題が軽くポジティブに思えてきたり、不安や抑うつが低減されたりすることが判明しています。

また場合によると、血圧や痛みの改善など、身体的健康にも寄与する可能性がある、とのこと(Martin, R. A.,(2001),“Humor ,laughter, and physical health” ,Psychological Bulletin,127(4),pp.504–519 ほか)。

そして近年では、そのことが「主観的幸福感(ウェルビーイング)」を高める可能性が、数多くの研究で指摘されているのです。

まさに、先ほどの「334」「なんでや! 阪神関係ないやろ!」が、その一例でしょう。そのほか、21年に登場した「あかん阪神優勝してまう(してしまう)」も、タイガースが好調で「優勝するかもしれない(でもダメかもしれない)」など、阪神ファンが葛藤する際に使われる支援的ユーモア。

同じく21年、途中まで首位をキープしていたタイガースの好成績に乗じて、大阪のテレビ局(朝日放送)が「あかん~」と題した関西ローカルの応援番組を放送すると、直後からタイガースの成績は急降下、結局は2位に終わりました。

2026年シーズン開幕時の阪神のポスター(撮影/集英社オンライン編集部)
2026年シーズン開幕時の阪神のポスター(撮影/集英社オンライン編集部)
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以来、ファンは「今年は優勝できる? できない?」など、自身の内面に心の乱れ(ざわつき)やストレスが生じた際、「あかん阪神優勝してまう」「それ、禁句(またしても優勝できない)やで」など、ファン同士のやり取りでユーモアに換えることで、自分たちを落ち着かせているのです。

こうした言動は、職場でもある程度有効です。複数の研究でも、メンバー間のコミュニケーションを促進したり、社会的距離を縮めたり、さらには業務パフォーマンスの向上にも有効だとする結果が示されています(Holmes, J.,(2006), Sharing a laugh ,Journal of Pragmatics,38, pp.26-50 ほか)。

皆さんも仕事などで「ちょっとした失敗」、たとえば会社の業績を著しく悪化させるような深刻なミスでなく、「やっちゃった」「次から気をつけます」程度の失敗をした際はぜひ、単純なダジャレでもいいので、自身や仲間を励ますユーモアコーピングを活用してみませんか?

文/牛窪恵

『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう マーケッターが気づいた「効果と法則」』(集英社)
牛窪恵
『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファン マーケッターが気づいた「効果と法則」』(集英社)
2026年3月5日
1,760円(税込)
224ページ
ISBN: 978-4-08-790234-1

【野球でなく「幸せ」に関する本です!】
★「おひとりさま」「草食系」など数々の流行語を世に広め、「ホンマでっか!?TV」ほかテレビのコメンテーターでもおなじみのマーケッター・牛窪恵さん。大学教授でMBAホルダーでもある著者が、推し活と行動経済学などの研究を経て導き出した「Well-being(幸福感)」に繋がるキーワード、それが「阪神ファンと熱狂」でした。
★みずからも熱狂的な阪神ファンで、毎年40試合前後を球場で観戦する著者だからこそ気づいた、彼らの体感的リアリティと行動心理の意外な関係。本書を読むことで、阪神ファン自身も気づいていない「幸福感」に繋がるヒントが、数多く得られるはずです。
★本書ではそうした実践的ヒントを、著名なマーケティング理論や女性ファン(TORACO)約3000人への調査・取材を通して独自分析し、わかりやすく展開します。

【効果と法則はこんなこと!】
■報酬の予測誤差=「ダメな子ほど可愛い」が喜びをもたらす
■プラシーボ効果=前向きな「思い込み」こそが幸運を呼ぶ
■ファンベース効果=「熱狂」こそが幸福度を高める
■サンクコスト効果=「今後も私(僕)がいなきゃ」が愛着を生む
■幸せの損益分岐点=「小さな幸せ」の積み重ねが、幸福度を高める
■PERMAモデル=「没頭」こそが、幸福持続の源泉に

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