「金太郎、現場を叱る。」(集英社文庫・コミック版3巻収録)
金太郎が赴任早々に見たとんでもない光景
『サラリーマン金太郎』第29話は、開幕から容赦がない。
赴任して早々、金太郎が目にしたのは、一ツ橋土木の現場作業員が野外で女性に乱暴している光景だった。迷う余地はない。金太郎の出した答えは鉄拳制裁。いきなり鼻をへし折る。
しかし作業員たちは悪びれない。金で買っただけだと言い、女性に3000円を握らせる。
これに金太郎はさらに激怒する。「せこい野郎らだ。3000円で女買ったってか?」と。
すると作業員はつるはしを金太郎の顔の真横に振り下ろし、吐き捨てる。
「女抱く金なんざ、3000円か30万か決まっちゃいねぇだろ。金の価値ってやつは人によって違うもんだ」
「エリートサラリーマン様は、女抱く時にゃ300万払うんか」
このやりとりが象徴しているのは、単なる荒くれ者の暴言ではないように感じる。そこににじむのは、社員に対する嫉妬、格差への怒り、そして元請け企業への反発だ。
荒船山トンネル工事の現場は、もはや建設現場というより無法地帯である。だが、こうした荒んだ空気は決して完全なフィクションとも言い切れない。
建設業の就業者数は1997年に685万人でピークを迎えたが、その後は減少を続け、2024年には477万人まで縮小している(総務省「労働力調査」、国土交通省資料)。ピーク時から約3割減だ。
さらに、現場を支える建設技能者はピーク時の約65%水準にまで落ち込んでいる(国土交通省)。人手が減れば、現場の統制は難しくなる。力関係もゆがむ。元請けより下請けが強い構図が生まれることもある。まさにこの現場もそれに近い状況だ。
そして金太郎を待っていたのが、一ツ橋土木の社長だ。大男で、見るからに腕っぷしが強い。
「現場が動くか動かねえかは、お前の持ってきた返事待ちなんだよ」
そう言い放つ大男に対し、金太郎はネクタイを緩める。
「本社の返事か……。聞かせてやるから表へ出ろ」
ついに真正面からの対決へ。荒れ果てた現場で、金太郎は何を通すのか。拳か、理屈か、それとも――。
荒船山トンネル編、本格開戦である。























