体育科教育の観点から見たセクシーポーズ
もっとも、「どこからが不適切なのか」という線引きは簡単ではない。子どものダンス表現は、どこまで許容されるべきなのだろうか?
「求愛行動のように、動物が身振り手振りで自分の魅力を相手に伝える行動がありますが、生物学的な側面から見ても、ダンスと性的な表現には関わりがあると言えます」
そう語るのは、体育科教育・ダンスを専門とし、「ダンスの表現から現れる動き」に着目した研究を進めている愛知教育大学准教授の成瀬麻美氏。
「一方で、小・中学校の体育において、ダンスは『表現運動(中学校ではダンス)』の領域に位置づけられています。文部科学省の基準では、小学校では低学年の『表現リズム遊び』から始まり、中学年の『表現・リズムダンス』、高学年の『表現・フォークダンス』へと学習内容が整理されています。
そして中学校では、『創作ダンス』『フォークダンス』『現代的なリズムのダンス』の3つの内容で構成されています。現在、TikTokなどで流行しているものを分類するのであれば、このうちの『リズムダンス』や『現代的なリズムのダンス』に近いと考えられます」(以下、「」内は成瀬麻美氏)
本来のリズムダンスは、相手に何かを見せることや、性的な魅力を表現することを目的としたものではない。音楽に合わせて身体を弾ませることで、人間が本来持っている律動の快感を引き出すことに意味があると成瀬氏は解説する。
「人は音楽が鳴ると自然に身体が動くものですが、そうした音と身体の関係を取り戻すことが、教育としてのリズムダンスのねらいです。したがって、過度に露出度の高い衣装を着たり、相手を誘うような動きを重視したりするものではなく、リズムに乗って自由に身体を動かすことそのものを大切にしたいと考えています。
そのため、個人的には、低年齢期から性的表現を連想させるポーズや動きを重視する指導には反対です」
現在はメディアやSNSの影響によって、セクシーな表現をいつでも身近に目にできる環境がある。スタイルが良い、かっこいい、かわいいといったイメージに惹かれ、真似をしたくなるのはある意味で自然なことだ。しかし、行きすぎた表現については、どのように向き合うべきなのだろうか?
「例えばダンススタジオに通い、指導者が振り付けを行っているケースもあるでしょう。また、振り付けを直接教えていなくても、子どもがそうした動きをしたときに周囲の大人が容認してしまうこともあると思います。
そして、家庭の中で保護者が気づかないうちに受け入れてしまっている場合もあるかもしれません。本来、低年齢期の子どもに対しては、そのような見方でダンスを捉えるのではなく、ダンスが本来持っている多様な価値を伝えることが大切だと思います」













