短大・専門学校が「合理的」となってしまう
高校生の進路選択において男子より女子の方が資格取得を重視していたが、それは女子が資格や免許を必要とする職業を希望しているからだろう。
そして、小学校から上位にランクインする希望職業がおおよそ安定しているということは、小さい頃からその職業へ就くことを想定しながら進路をイメージしてきたと考えられる。
実際、高校生の進路選択において、「将来の職業」は重要な検討事項となっている。
ここに、女子が短大や専門学校へ誘われるポイントがある。なぜなら、女子の希望職業ランキングで不動の地位にある「看護師」「保育士」へ就くことは、短大や専門学校へ進学しても実現できるからである(「栄養士」や「幼稚園教員」も同様)。
2018年度の指定保育士養成施設の入学者数は、大学が1万8354名、短大が2万1567名、専門学校が6274名となっており、半数近くが短大へ進学している*2。
看護師養成は年数や設置主体が複数あるため参考数値になるが、日本看護協会によると、2023年度の看護師3年課程養成所の一学年定員は、大学が2万6245名、短期大学が970名、養成所全体(2万6811名)のうち、全日制高校2万6611名、専修学校2万6661名(重複あり)となっており、大学へ進学せずとも看護師になる道が複数開かれている。
先にみたように、高卒家庭の高校生は「将来なりたい職業」があってはじめて大学進学を検討し、その保護者も「資格取得」や「将来の仕事とのつながり」を重視する。
もし、高卒家庭の女子高校生が看護師や保育士を目指すのであれば、大学進学よりも早く「なりたい職業」へ就くことができる上、大学進学するよりも数年早く収入を得ることが明確である専門学校や短大への進学は、決して不自然ではない(私的内部収益率の観点からも「合理的」)。
高校の進路指導も同様である。
長年、その地域の保育士や看護師を養成し、地元へ多数輩出してきた「実績」があり、そうした信頼が地元に根付いていた短大や専門学校であれば*3、保育士や看護師を志望する高校生に対して、教師や保護者が短大や専門学校をすすめることは不合理ではない。
だから現状の進路形成で問題はない、と言いたいわけではない。女子高校生の進路を目にみえる形で制限する保護者や教師の不合理は、確かに存在する*4。
大学へ行くことを直接妨げられる経験は、男子よりも女子に多いだろう。ただ、こうしたエピソードに代表されるような、いわば「呪い」や「足枷」といった非常にわかりやすい事例ばかりではないところに、進路とジェンダーの難しさはあるように思われる。
脚注
*1 女子が「医師」を希望しているのに周囲から「看護師」を代替案としてすすめられるより、男子が「看護師」を希望しているのに周囲から「医師」を代替案としてすすめられる方が多いように思われる。
*2 厚生労働省「保育の現場・職業の魅力向上検討会」第5回の参考資料1「保育士の現状と主な取組」より。3年間の入学者数が報告されているが、短期大学は2016年度2万3883名、2017年度2万2397名、大学は1万7782名、1万7716名、専門学校は5720名、6083名であった。日下田岳史(『女性の大学進学拡大と機会格差』東信堂、2020年)は、短大全体の進学者数は減少しているが、教育系学科は短大離れを経験していないこと、経済的にゆとりがない層の受け皿になっていることを指摘している。
*3 特に「地方」は、大学そのものが少ないため、看護師や保育士の養成を担う主な機関が専門学校や短大であることも多いだろう。
*4 「『女子は浪人耐えられない』?進路指導、校長の言葉に口挟めず」朝日新聞、2024年4月24日。













