負け試合の“エンド”を変えるリコーダー

――(牛窪恵 以下同)さばかんさんの試合実況で、負け試合後には“リコーダー演奏”が流れますよね。あれを始めたきっかけは?

さばかん(以下同) 2020年のコロナ禍です。開幕が6月まで延期されて、配信ネタがなくなった。そこで「ネタが尽きました」と言って、タイガースの1番から9番打者まで、リコーダーで応援歌を吹いたのが始まりです。

気が抜けた(腑抜けた)ような、ゆるいリコーダー演奏なのですが、その後、負け試合後に流すようにしたところ、ファンの皆さんから「負けた後のストレスや悔しさが和む」といった声を頂くようになって、いまも続けています。

阪神タイガースのショート動画なども配信する『さばかん』を運営するYouTuberさばかんさん(写真/本人提供)
阪神タイガースのショート動画なども配信する『さばかん』を運営するYouTuberさばかんさん(写真/本人提供)
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――私が出した新刊『「幸福感」に満たされたいなら阪神ファンを知りましょう』でいう「ピークエンドの法則 ※1」にも通じます。試合が終わった後の“エンド”を少しでもプラスに転化することで、全体の印象がポジティブに変わる、というものです。

まさにそうだと思います。負けてすぐ配信を終えたら、「ああ……」と悔しさだけで終わってしまう。でも、その後にリコーダーの“ピーピピッピピッ♪”との腑抜けた曲が流れると、「まあ、いいか」と少し和んだ心地になってもらえる。

実際、試合が終わった直後に、視聴者数が少し増えるんですよ、それも「負けたとき」だけ。癒やされに来てくださる方がいるんじゃないかな、と思います。

――新刊にも書きましたが、「タイガースの優勝が、認知症の阪神ファンの方々の症状の改善に影響した」という研究(※2)もあります。負け試合後の癒やしも、周囲に良い影響を与えている可能性がありますね。

そう考えると、うれしいですね。負けたままイライラして終わるより、少しでも気持ちが和らいで終われたら、その周りの方々も穏やかでいられるかもしれない。なにしろ阪神ファンって、感情の振れ幅が大きいですから。だから、あのリコーダーで少しでも和らげばいいなと。自分も含めて、です。

※1:Kahneman,D.,et al.,(1996) ,“Patients' memories of painful medical treatments” , Published in Pain 1 July,66,1,pp.3-8)。
※2:脳神経内科「はつたクリニック」院長・初田裕幸氏による研究(産経新聞 2025年3月29日掲載記事)