やっぱり愛が大事なんじゃないか
塚原 本の中でも書かせていただいたのですが、小島さんとのお話の中で一番印象に残っていることって、「盆栽と向き合うなかで一番大事なことは愛だ」というお話で。
小島 はい、「愛でる」ですね。
塚原 盆栽をこういう形にするとか、木が病気になったらこういう手当をするとかのテクニックはいろいろあるけれど、毎日見て、触れて、変化に気づいてあげる。その愛みたいなものが一番大事だというお話でした。
陶器などの工藝品も落とすと割れちゃうし、耐久性のある素材でもないんですけど、割れた陶器を漆で接着して金粉を蒔く「金継ぎ」という伝統技術があるので、器を長持ちさせることができます。
建築でいえば、日本で一番長くもっている木造建築は法隆寺です。法隆寺は建築様式が素晴らしいので1400年近く経過しても耐久性がある、それは確かなことですが、その1400年の間に何度も何度も宮大工さんたちが修繕してきた、その手しごとのおかげで長持ちしている事実もあります。それって本質的には建築様式がどうこうというよりも、「愛されるものが一番長もちする」ということではないかと思っていて。
今、社会における持続可能性が大事ということで、「サステナブル」とか言われていますけど、壊れたり消費することをベースとしたサステナブルではなく、修繕するときも「エコのために直さないといけない」というような義務感ではなく、「直してでも使いたい」と思わせてくれるもの、つまり「使い手に愛されるもの」をつくるのが、職人さんの手しごとの一番いいところだと思うんです。
やはり工藝でも「愛」が根底にあるのではないか。愛というものがないと、工藝の魅力というものは出てこないんじゃないか。そういう考えに思い至ったのは、「やっぱり愛が大事なんじゃないか」という小島さんのお話がきっかけでした。
小島 それって「盆栽を育てるところで何が大切か?」という話で出た言葉だったと思います。僕たちが盆栽をお客さんに手渡すとき、最初に「お水をあげてくださいね」とか、「太陽の光に当ててあげてくださいね、光合成が大事なんですよ」とかいうのは当たり前の話なんです。ただ本当に大切なのは、やっぱり「愛」なんです。だけどいきなり「愛です」って言っても、お客さん構えちゃうので。(笑)
でも愛があること、毎日その木を愛でることによって、木のコンディションがだんだんわかってくる。「昨日とちょっと違うな」とか「あれ? 先週と色が変わってきちゃったな」とか、愛があるとそういう些細な変化に気づくようになる。親が子供の変化に気づくのと一緒だと思います。
なので、盆栽を枯らしてしまったお客さんに、それも何度も枯らしてしまったときに、初めて言う言葉なんです。「愛ですよ」って。愛でてあげてくださいねって言うんです。
構成/高山リョウ 撮影/TRADMAN’S BONSAI














