インターネットで「眼差し」が可視化されはじめた2000年代初頭

『Talent―タレント―』1話より。物語の主人公。左から華蓮、ミコト、麻生、柘植(©︎よしながふみ/集英社)
『Talent―タレント―』1話より。物語の主人公。左から華蓮、ミコト、麻生、柘植(©︎よしながふみ/集英社)
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—『Talent―タレント―』では「容姿」をどのような価値として捉えていますか?

よしながふみ(以下、同) 容姿は、才能にとってひとつの要素にすぎないと思っています。主人公の一人であるミコトは、幼い頃から「容姿に恵まれている」と言われ続けてきた存在ですが、それが必ずしも生きやすさにつながっているわけではない。

『Talent―タレント―』5話より(©︎よしながふみ/集英社)
『Talent―タレント―』5話より(©︎よしながふみ/集英社)

—主人公の一人、ミコトが友だちから「調子に乗らないほうがいい」と言われるシーンはとてもリアルでした。

少女同士の世界って、褒め言葉と牽制がすごく近い場所にあると思うんです。「あの子、男子と話すとき、態度が違うよね」とか言うじゃないですか(笑)。ミコトの息苦しさは、そういう無自覚さの積み重ねから来ているのかな、と。『きのう何食べた?』では描けないシーンなので新鮮でした。

まだ描いていないのでなんとも言えませんが、今回は容姿を「時間とともに揺らいでいくもの」として位置づけようと思っています。若いときに「可愛い」と評価された人ほど、それを失ったときの喪失感は大きいはず。

今は歳を重ねた人の美しさを評価する動きもありますけど、「若く見える点」にフォーカスしているように感じるので……。「容姿」以外の武器に重心を移していかざるをえないミコトが、歳を重ねてどうやって変化していくのか。私自身とても楽しみです。

『Talent―タレント―』1話より(©︎よしながふみ/集英社)
『Talent―タレント―』1話より(©︎よしながふみ/集英社)

—若さと結びついた容姿が揺らぐ、という点では、現時点では麻生くんも「容姿に恵まれている」存在です。でも、それが強みになっていない。

彼は容姿がいいからこそ、逆に大衆が共感しやすい「疲れた会社員」や「パッとしない中年男性の役」が馴染まない。若いときは「イケメンキャラ」にハマると思うのですが、30代になってもそれを突き通せるのか。容姿はプラスにもなれば、足かせにもなり得る。男女ともに通じる話だと思います。

『Talent―タレント―』5話より。(©︎よしながふみ/集英社)
『Talent―タレント―』5話より。(©︎よしながふみ/集英社)

—役柄やキャリアの話とは別に、もうひとつ印象的だったのが、ベッドシーンをめぐる掲示板の書き込みです。2000年代のヒリヒリ感を思い出しつつ、容姿が「消費」されていく瞬間のようにも感じました。

2000年代は、性的な眼差しが、インターネットを通じて表出された時代だったと思います。「映画の中の表現」とは別に、俳優本人に対して、直接的な眼差しを向ける人たちも存在していた。それが可視化されてしまったタイミングだったのだと思います。誰が悪いのかはっきりしないまま、書き込みが独り歩きして「仕事が減った」結果だけが残ってしまう。

ただ、仕事が減ることが、必ずしも不幸だったとも限らない。当の本人にとっては、「ようやく腰を据えて、自分のやりたい仕事ができる」と感じられたケースもあったはずです。