「なんか飛んでいった」1000万円
スーパーの手取りは健康保険や厚生年金を差し引いて月14万円。月7万円の住宅ローンは72歳までかかる。しかもIさんの妻は数年前から難病にかかっていて、その心配もある。
頼みの退職金は、あっという間になくなったという。
「この数年で1000万円なくなりましたね。妻の医療費? いや、そういうわけでもなくて、本当になんか飛んでいきました。大きな出費と言えば、家のリフォームくらいですが、なーんか飛んでいきました」
Iさんは破れかぶれに言った。長年勤めた会社を退職した後に、1000万円ほどをいつの間にか使い切ったというケースは何度か耳にした。収入が激減しているのに、生活レベルを落とせないことが原因になっているのだろう。
Iさんは最近スーパーで、豆腐や納豆など、和食売り場の品出しと、清涼飲料水の品出しも担当するようになった。
「ペットボトルは重いですよ。1.5リットルや2リットル入りのペットボトルが6本入っている段ボールや、200ミリリットルが24本入りの段ボールを台車に載せて運びます。夏場はかなりペットボトルが売れるので、それを10往復くらいする。重いですし、きついです。私と同じ60代の男性パートの人は、ヘルニアになりました」
Iさんはボソリとつぶやく。
「今思えば早期退職を受け入れずに、もとの会社で我慢していればよかったかな……」
文/若月澪子













