「化石燃料文明」の終焉と消えてゆく「1次エネルギー」
このパラダイムシフトは、私たちがエネルギーを捉える基本的な概念さえも根底から変容させる。その象徴が、「1次エネルギー」という概念の終焉である。1次エネルギーとは、原油、石炭、ウランといった、自然界から採取されたままのエネルギー源を指す。
これを発電所や製油所で変換して得られる電気やガソリンが「2次エネルギー」と呼ばれる。この分類法そのものが、変換過程で大規模な熱損失(転換ロス)を必然的に伴う化石燃料や原子力エネルギーを前提とした、20世紀の「燃焼文明」の遺物に過ぎない。
具体的に言えば、1kWhの電力(2次エネルギー)を得るために、典型的な火力発電所や原子力発電所では、その2倍から3倍に相当する1次エネルギー(燃料)を投入する必要がある。
つまり、投入されたエネルギーの半分以上が、利用されることなく熱として大気中に捨てられている。この膨大な無駄こそが、化石燃料文明の本質的な非効率性を示している。
これに対し、太陽光や風力といった再生可能エネルギーは、根本的に物理法則が異なる。太陽光パネルは、降り注ぐ太陽光エネルギーを直接、2次エネルギーである電気に変換する。その変換過程におけるロスはごく僅かであり、1kWhの電力を生み出すのに必要な1次エネルギー(太陽光)は、ほぼ1kWhである。
それ以上に重要な違いは、従来の化石燃料や原子力は石油やウランといった枯渇性のエネルギー資源(ストック)を掘り出して発電などに用いるのに対して、太陽光や風力は自然に流れさってゆく光や風といったエネルギー資源(フロー)から電力を回収する装置である。
地球に降り注ぐ太陽エネルギーは人類が使っているエネルギー量の数千倍もあり、そのほとんどが使われないまま流れさっている、ほぼ無尽蔵かつ膨大に降り注ぐ再生可能なフローのエネルギー資源である。
※Eiとは、「知性化された電力」を意味し、「電気(Electricity)×知性(intelligence〈人間+AI〉)」の重なりである。「エネルギー知性学」は、「エネルギー地政学」に対置される新しい考え方の枠組み。
文/飯田哲也 写真/shutterstock













