「ブラディ・ドール」シリーズは私にとっての「梁山泊」

Q 今年、先生のファンになりまして、皆さんに追いつこうと、一心不乱にたくさんの作品を読んでいるところです。私は仕事柄、食品に興味があるんですが、先生の作品には現代の日本にはない美味しそうな食べ物がたくさん出てきます。いちばん食べたいものは何か、お聞きしたいです。

『森羅記』は海の物語だから、日本人がよく食べる魚がたくさん出てくるのとは違って、『チンギス紀』は、羊しか食べてないわけ。で、生の羊肉にかけて食べるとほっぺが落ちそうになっちゃうという調味料を書いたんです。選ばれたやつしか食わせてもらえないという秘伝のタレ。それを自分で作ってみたい。新しい読者になってくれてありがとうございます。

Q 今の時代、男として生きるってどういうことでしょうか。

 そういうことを難しく考えない。だけど、一言だけ言いましょう。簡単だよ。約束を破らない。卑怯なことをしない。二つだけ守れば大丈夫。約束を破らないと決めた瞬間に、いい加減な約束はできなくなるんだよ。卑怯なことをしないと決めた瞬間に、ヘンなことはしなくなる。そうやって背骨を持って生きていれば、人生間違うことはありません。頑張れよ。

Q 先生のご著書の中では「ブラディ・ドール」シリーズと「約束の街」シリーズが好きで、気持ちが落ち込んだときに読み返しては元気づけられています。先生の中でこれらのシリーズにはどのような重きが置かれているか教えていただきたいです。

 初期に書いた「ブラディ・ドール」は男たちが集まってきて命を削る物語で、これは私にとっての「梁山泊」なんだね。たとえば藤木というキャラクターは、『水滸伝』の楊志(ようし)林冲(りんちゅう)になったんですよ。そうやってこのシリーズの男たちはその後の物語の中に生まれ変わっていった。つまり物語はずっと連環するし、人も連環する。人の命運は尽きるからそれぞれの人を書いた物語は終わるんだけど、物語自体に終わりはないということです。最後に私の原点のような作品を思い出させてくれてありがとう。
 そろそろ時間が迫ってきました。皆さん、小説があってよかったと思いませんか。創造物は、生きるためには必要ないけれど、人間らしく生きるためにはあったほうがいい。私はそういうものを書いている自負があるし、これからもできる限り力を尽くします。今日はこんなにたくさん来てくださって、優しい皆さんと話ができてとても嬉しかったです。また会いましょう。

歴史に仮託して現代人の心情や行動原理を書く。それが私の歴史小説であり歴史小説観です『森羅記』北方謙三_4
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森羅記 二 揺籃の塵
北方 謙三
森羅記 二 揺籃の塵
2026年2月5日発売
2,090円(税込)
四六判/320ページ
ISBN: 978-4-08-770031-2

クビライ、ついに大モンゴル国の帝に。
さらなる脅威に鎌倉幕府は、いかに立ち向かうのか……。
蒙古襲来を描いた歴史巨編、堂々第二巻!!

九州から珍島への海路にあってタケルは自分が何者なのか、わからなかった。今は礼忠館の命令のまま米を運ぶ船隊の指揮官で、時には速頻路に所属する水師としてモンゴル軍の兵站輸送に手を貸し、もとより松浦水軍の船頭のひとりだ。しかし、そこに自分の意思がない。佐志家の満子を陸奥の得宗被官・木作繁安と争い、何度も海を往復しても、どこかあてどないのだ。「ただ日本人だと思え」と言われたことがある。このあてどなさは、日本の現状に通じるものなのだろうか。
モンゴル国の第四代皇帝モンケは完全無欠な帝を目指し、性急に領土を拡大しようと、高麗侵攻開始と期を同じくして弟のクビライに南宋攻略を命じていた。偉大なる祖父・チンギスが未踏の地を治めることこそが自らの使命だと言わんばかりに。
劣勢の高麗では、波瀬一族が一途な思いを抱き懸命に珍島を守り、ひとときの安堵を獲得。残虐とも言えるモンゴル軍の脅威を察知してか、鎌倉の北条時頼は、駿馬を集め、船を造り、水軍を調練し……様々な動きを生むことで、日本をひとつにしようとしていた。幼い我が子・時宗を苛烈な態度で遠ざけながら――。廓大と紕いの第二巻!!

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森羅記 一 狼煙の塵
北方 謙三
森羅記 一 狼煙の塵
2025年9月5日発売
2,090円(税込)
四六判/320ページ
ISBN: 978-4-08-770003-9

北条時宗の誕生から、元寇に立ち向かってゆく姿を
過去最大のスケールで描く歴史長編シリーズ、開幕。

【あらすじ】
王座が空位のまま、モンゴル帝国は権力争いにより分断される気配に満ちていた。クビライは、祖父・チンギスの足跡を追う長い旅路の中で、様々なものを見た。人々の生活、祖父の部下たち、そして、初めての海。驚くほど静かだった。草原の先は行き止まりではなく、海があり、その海の向こうにまた国がある。モンゴル、高麗、南宋、日本。それらは海でつながり、物流、利権争いなどが日常的に行われ、莫大な富を生んでいた。
時を同じくして、日本は鎌倉時代。執権に就いた北条時頼の悲願である、水軍を持つための準備を着々と進めていた。何か大きな脅威が近づいてくる気がするのだった――。
堂々たるシリーズ第一巻。

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