世界で火葬率が上昇する理由
日本の葬儀と墓の簡素化は、家族も地域も分断された無縁化、葬式頼りの仏教が形骸化した無宗教化、新自由主義経済を追求していったあげくの二極化などから発生している。この傾向は日本だけでなく世界的現象といっていい。2025年1月のトランプ米大統領の誕生とそれに呼応するような欧州各国での右派勢力の伸長は、無縁社会と二極化をもたらしたグローバリズムへの反発から始まっており、世界各国の自由民主主義体制の退潮とナショナリズムの勃興につながった。
同じく世界に共通するのは、精神的、政治的には保守回帰に流れながらも、宗教の退潮には歯止めがかからないことだ。人工中絶に反対する保守派中核のキリスト教福音派はトランプ支持で固まっているのだが、福音派と自認する有権者は2020年の28%から2024年には22%に低下している。信仰心は希薄化し、貧困層の増大で葬儀にカネをかけたくてもかけられない。それを象徴するのが各国で上昇している火葬率である。
親族や知人が、墓地に集まって牧師とともに祈りの言葉を捧げ、花を添えた立派な棺を土の中に安置する―ハリウッド映画や海外ドラマで描写される弔いの多くが土葬だ。国民の多くがキリスト教徒の米国では、死者の魂は「最後の審判」を経て肉体に戻り復活するとさており、そうした宗教観から土葬が選択されてきた。
しかし近年、その米国の風習は急速に変わりつつある。北米火葬協会(CANA)によると、1970年に4%あまりだった火葬率は1990年に約17%、2010年に約41%と上昇を続け、2016年に初めて50%を超え、21年は約58%だった。全米葬儀士協会(NFDA)は、2040年に火葬率は約8割に達すると予測している。
20世紀の初めには米国民の100%近くがキリスト教徒だった。ところがワシントンに拠点を置くシンクタンクのピュー研究所が2023年〜2024年にかけて行った宗教調査で、キリスト教徒と自認する人は約6割となり、約3割が無宗教だと回答した。
キリスト教徒であっても教会に通うのは4人にひとり。同時期にコネティカット州のハートフォード宗教研究所は、「約38万の全米教会の約3割が、今後、存続できなくなる」というレポートを発表した。
火葬率が高いことで知られるラスベガスの老舗葬儀社の価格表(2023年)によれば、最も標準的な土葬サービスの価格が約1万6000ドル(1ドル140円換算で約224万円)で、標準的な火葬サービスの価格は3470ドル(同約49万円)だ。焼却するだけの日本でいう「直葬」は2600ドル(約36万円)である。この価格差は大きい。土葬の場合はマホガニー、ヒノキなどの木製の棺だが、火葬の場合はほぼ段ボール製だ。「シューズボックス」と呼ばれ、燃焼効率がいいので好まれており、価格は約200ドルである。













