思い描く理想社会

刀は理念として「変化の起点になる」を掲げている。変化の先に森岡が見据えるのは、「日本人らしさを生かした理想の社会」の実現だ。この先、日本が生き残るには、その方向性しかないと確信している。

森岡が考える「日本人らしさ」とは何か。

1つは、日本人の特徴と言われる「勤勉性」や「同調性」である。

「20世紀の製造業がなぜ成功したかといえば、日本人がものづくりに妥協しなかったからでしょう。それを可能にしたのが一人ひとりの勤勉性や、目的に向かって一丸となる同調性です。

しかも、日本人は器用でもあった。こうした特徴は保守的に見えるかもしれません。しかし、消費者が本当に欲するものを、日本人の特質を生かして作り上げれば、日本の製造業は再び活性化します」

P&Gジャパンでブランドマネージャーを歴任後、2004年にP&G世界本社に転籍した森岡氏
P&Gジャパンでブランドマネージャーを歴任後、2004年にP&G世界本社に転籍した森岡氏
すべての画像を見る

もう1つの日本人らしさは「ホスピタリティ」。2021年の東京オリンピックの頃に流行った言葉で言えば「おもてなしの精神」だ。

「茶の文化を起源として、日本人の生活には相手を思いやる気持ちが行き渡っています。テレパシーで会話できているんじゃないかというくらいに洞察力に優れているのが日本人なのです」。

勤勉性と同調性に裏打ちされたものづくりと、相手が必要なものを見極める洞察力が組み合わさった時、日本のビジネスは最高のパフォーマンスを発揮できる。それが森岡の提言だ。

そして、日本人の特性を最大限に生かせる道筋を見つけ、日本経済に活力を与えることが、森岡が考える「マーケティングの本質」なのだ。

文/奥井 真紀子

森岡毅語録 明日は今日より強くなれる
奥井真紀子
森岡毅語録 明日は今日より強くなれる
2026/1/10
1760円(税込)
216ページ
ISBN: 978-4296002689
USJの再建に始まり、自身が立ち上げたマーケティング会社、刀では、テーマパーク、食品、金融など多彩な領域で成果を挙げ、2025年7月には悲願の「ジャングリア沖縄」開業を成し遂げた森岡毅氏。しかし、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。 吃音を抱えた幼少期、自分の弱点に思い悩んだP&G時代、そして、開業初日から予期せぬトラブルに見舞われたジャングリア沖縄──。幾多の困難に直面しながらも、目標達成に向かって突き進んできた森岡氏は、何を支えとしてきたのか。森岡氏の取材を重ねてきた著者がインタビュー記録の中から、森岡氏の考え方の核心と言える「名言」を抽出し、1冊にまとめた。 「ナスビはナスビにしかならない」「自分のできることに世界を合わせる方法を考える」「『欲』こそがリーダーシップの根源」「動いているのは心であって数字じゃない」――森岡氏が発した66の名言を、「生き方」「逆境を力に」「リーダーシップ」「勝ち筋のつくり方」の4つの切り口で紹介。さらに、森岡氏の哲学を育んだ幼少期からのヒストリー、「ジャングリア沖縄」の現在地と未来への展望を語ったインタビューを収録。 就活生や新社会人、転職などで新しい環境に立ち向かう人。 仕事や人生の壁を乗り越えようと奮闘する人。 多くの人の挑戦に寄り添う珠玉の語録。
amazon