監督の意思で差し替えができたはずの海外映画祭と上映会
同映画関係者は、劇場上映や配信はさておき、海外の上映会でもオリジナル版が上映されていたことの方に疑問を感じるという。
「疑問に思ったのは、伊藤監督が2月20日に差し替えを約束した後でも、海外の上映会で修正版ではなく、オリジナル版を上映していたことです。とくに自分が出席する上映会でしたら、修正版に差し替えてもらうことは容易なはずです。
それでもオリジナル版を上映し続けたのは、極力オリジナルを上映したかったのだろうなと想像しています。あるいは差し替えることで作品の正統性や合法性に疑問符がつくのを嫌ったのかもしれません。」
2025年3月、アカデミー賞授賞式直後にニューヨークで開催された上映会には、状況を注視する日本人記者も駆けつけたが、上映されたものは、オリジナル版であった。同上映会には、伊藤監督も出席し、上映後にはトークセッションを行っている。
「監督が実際に上映に立ち会うとなれば、上映用の素材を直接渡すこともできるので、差し替えは容易です。主催者は普通は監督の意向を最大限尊重するものなので、それに異議を唱えることもあまり想像できません。
つまりご自分が出席する上映会や映画祭などでオリジナル版が上映されたのだとしたら、それは伊藤監督に差し替えたいという強い意思がなかったのではないでしょうか」(前同)
筆者は、監督による差し替え意向の公表後、海外の映画祭で同作品を見たという視聴者らにも取材を行ったが、日本修正版で施されたような大々的なモザイク処理(日本公開版では、西廣陽子弁護士の顔が映画全編に渡りモザイク処理がかかっている)の入ったバージョンの上映を見たという証言は得られなかった。
「差し替えたくないのであれば、最初からそのように宣言すべきだったと思います。差し替えるといって差し替えなければ『約束が違う』ということになり、問題が生じます。西廣弁護士側の主なフラストレーションも、そこにあるのではないでしょうか。」













