日本では当たり前の親切が脱北者の心に沁みる…
実際、脱北者の方々は、彼らが育ってきた環境では、周囲から日本語が聞こえてくるという経験がめったにないために、街を歩いていて日本語が聞こえてくるのがとても衝撃を受けるそうです。ソアさんは以前、外国にある北朝鮮レストランで働いていたとき、そこに来る日本人のお客さんたちから発せられる日本語を聞くのがとても嫌だったと語っていました。
しかし、それほどまで嫌がっていた日本を実際に訪れてみると、どこに行っても日本の方たちは親切にしてくれるので、驚いてしまうといいます。アンニさんも、日本でレストランに入ったときに、とくに何者でもない自分たちに対して、ここまでやさしくしてくれるのかと感動して泣いてしまったことがありました。
北朝鮮に住んでいた頃は、人間以下のような扱いをされた過去があったからこそ、その真逆の世界、真逆の扱いをされたことにとても衝撃を受けたのではないでしょうか。
アンニさんとアンニさんのオモニと初めて大阪を訪れたときは、帝国ホテルに宿泊したのですが、スタッフの方にとても親切にしていただいたことが、いい思い出になっているようです。
広島の宮島もとてもよかったようで、オモニは宮島に着いた途端、「次の家族旅行も宮島がいいからプランを立てなくちゃ!」と言っていたほどでした。
そのため、今でもアンニさんのオモニに会うと、ずっと感謝をしてくれていて、「韓国では私にご飯をご馳走させてください!」と言ってくれたり、私のことを冗談で「JUJU様」と呼んだりします。でも、本当にいい思い出だったようで、韓国にいるときにもいつも日本の話をしているほどです。
日本旅行に出掛けてよかったと思っているのは、アンニさんのオモニだけではありません。アンニさん、アンニさんの旦那さん、ソアさん、ジョンヒョクさんなど、私と一緒に旅をしてくれた方々はみんな口を揃えて言うのです。
それは、日本人の親切さに触れたことだけでなく、普段彼らが住んでいる韓国とは異なる日本の素敵な景色や、街の雰囲気、文化などに触れ、経験を重ねたからこそ「日本を旅してよかった」と感じるのだと思います。
そしてその後は必ず、日本を好きになって帰るのです。もしかすると、そんな「やさしさ」が当たり前の環境で暮らしている日本の方々にとっては、脱北者が感動するやさしさは、ほんの些細なことかもしれません。しかし、そうした当たり前の「やさしさ」が、脱北者の方々の心に沁みているような気がします。













