ついに日本で公開開始

伊藤氏は2015年4月、元TBS局員の山口敬之氏から性暴力を受けたとして、2017年9月、東京地裁に民事訴訟を提起した。2022年、双方の上告が最高裁で棄却され、同意のない性行為を認定して約332万円の賠償を命じた二審・東京高裁判決が確定した。

山口氏は当時、準強姦容疑で書類送検されたものの、東京地検は2016年に山口氏を嫌疑不十分で不起訴処分としていた。伊藤氏は翌年5月に不起訴不当を訴えたが、東京第6検察審査会も同9月、不起訴相当と議決している。

本作をめぐっては伊藤氏の民事裁判を担当していた弁護士らが2024年10月に記者会見を開き「(映画には)裁判以外で使用しないと誓約書を交わしたはずの防犯カメラ映像が使用されている」、「捜査員や取材対象者の映像や音声が無断で使われている」など、内容に問題がある旨主張していた

海外ではすでに配信や上映が始まっており、今年1月には、第97回米アカデミー賞の長編ドキュメンタリー部門にノミネート。日本監督史上初だとして大きな話題をさらった。

『Black Box Diaries』の海外版ポスター
『Black Box Diaries』の海外版ポスター
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その一方、今年2月20日、伊藤氏の元代理人らが日本外国特派員協会にて会見を開き、改めて問題提起。同日に予定されていた伊藤氏の会見は、本人の体調不良によりキャンセルとなったものの、日本外国特派員協会を通じて文章を発表しており、そこには〈映像を使うことへの承諾が抜け落ちてしまった方々に、心よりお詫びします。最新バージョンでは、個人が特定できないように全て対処します。今後の海外上映についても、差し替えなどできる限り対応します〉と、修正を行うという趣旨の記載があった。

12月の日本公開までに、元代理人らが主張していた問題点について、両者の間でいかなる協議が交わされたのか。文書を紐解くと、双方の言い分が対立しており泥沼の様相を呈していたことがわかった。