あらわになった両者のズレ

佃弁護士は、1ヶ月が経過した8月18日と同月26日にファクスを送信し、質問への回答を求めた。

8月19日、伊藤氏側がファクス送信。7月18日に送信した内容とまったく同様の文言が記されていた。9月1日、佃弁護士がファクス送信。「貴職らが本年7月18日付の文書とまったく同じ内容を送信してきたこと、貴職らの誠意の著しい欠如があらわれており、甚だ遺憾に存じます」等記されている(*3)。

1週間後の9月8日、伊藤氏側からファクス送信。「お問い合わせの件も含めて、伊藤氏本人の口から、直接ご説明申し上げるのが最も誠意ある態度であると思料しております。伊藤氏もその覚悟ですので、お会いする日程を調整させてください」と、“対面での伊藤氏本人からの説明”を提案した。加えて、当時の民事裁判の弁護団のひとりである加城弁護士について「如何なるお立場でしょうか」と“差し替え”との関係が不明な質問をしている(*4)。

佃弁護士側が事実関係を質問しているのに対し、回答のないまま“伊藤氏本人が説明するので会って欲しい”と求める伊藤氏側。両者の意向は折り合わないまま、3ヶ月を迎えようとする9月23日、伊藤氏側がファクス送信。これまで繰り返し佃弁護士から送られてきた質問事項への回答はなく「加城先生は如何なるお立場でしょうか」と逆質問が繰り返された(*5)。

10月3日、佃弁護士が質問への回答を10月6日までに求めるファクスを送信。すると10月6日、伊藤氏側からは回答ではなく、“話し合いを拒否していると理解して良いのか”という趣旨のファクスが届く。

「これらの疑問に対し、先日、伊藤氏が直接お会いし、映画の修正に関する具体的なご提案、ご説明を行いたいとの面談を申し入れた次第です。ところが、今回、貴職はこの提案を拒否されているように受け取れますが、そのように理解してよいのでしょうか(以下略)」

西廣・加城弁護士の代理人である佃弁護士 写真/本人提供
西廣・加城弁護士の代理人である佃弁護士 写真/本人提供

10月6日、佃弁護士はファクスで以下のように伝えた。

「伊藤氏の直接のご説明は不要であり、貴職ら(編集部注:代理人弁護士を指す)が文書で回答することが適切かつ確実であるため、それを求めているのです」

「これまで当方は貴職らに対し、表記の映画が公開されている状況につき、本年6月24日以降、再三に亘り伺っていますが、本日現在貴職らは、甚だ理解しかねる応答をしてくるのみであり、全く回答をしてきておりません」

として、これまで質問に答えていないのは“海外公開のオリジナル版をそのまま各国で上映しているからではないか”と尋ね、10月10日までの回答を求めた。

伊藤氏側は10月10日、ファクス送信する。そこには、10月6日の佃弁護士からの質問への回答はなく、こう記されている。

「(前段略)当方は、あくまで誠実な話し合いによる解決を求めており、そのために、紛議調停申立てを取り下げ、懲戒手続きもとらず、話し合いの日程調整をお願いしている次第です(中略)まずは、話し合いのテーブルに就かれることをお約束ください」