不動産バブルが崩壊し、内需が冷え込む中国

国内の不動産バブルが崩壊し、中国の庶民は財布の紐を固く締めている。内需が冷え込んでいるのだから、企業は生き残るために海外へ活路を見出すしかない。なりふり構わぬ輸出攻勢は、日本を含む世界の製造業にとって脅威以外の何物でもない。

2026年までは、この輸出ドライブによって見かけ上の数字は維持される。トランプ氏との一時的な手打ちも、時間稼ぎにはなるだろう。しかし、その先に待っているのは2030年という断崖絶壁だ。ここから先、中国経済は避けようのない減速の重力に捕らわれる。

なぜなら、中国が抱える構造的な病巣は、もはや対症療法で治せる段階を超えているからだ。

第一に、人口減少と少子高齢化のスピードが異常に速い。日本も同じ道を歩んでいるが、中国の場合は「豊かになる前に老いてしまう」という致命的な問題を抱えている。

社会保障制度が未整備なまま、支えられる側の高齢者が激増し、支える側の若者が減っていく。一人っ子政策という、かつて国家が強引に進めた人口管理のツケが、今になって残酷な形で回ってきているのだ。

習近平は本気で焦っている–––「EV墓場」と「異常な少子高齢化」今、中国経済に広がる“違和感”の正体_2

長期的な減速は避けられない

第二に、不動産不況の闇が深すぎる。これまで中国経済を牽引してきたのは、マンション建設などの不動産投資だった。地方政府は土地を売って財源にし、その金でインフラを作って成長を演出してきた。

しかし、その錬金術は終わった。誰も住まない「鬼城(ゴーストタウン)」が各地に点在し、建設途中で放置されたビル群が雨風に晒されている。

地方政府が抱える「隠れ債務」の総額は、誰にも正確にはわからない。一説には天文学的な数字になるとも言われている。この巨大な借金の爆弾を抱えたまま、かつてのような高度成長を続けることは物理的に不可能だ。

欧州のシンクタンク、ブリューゲルは、この状況を「重力」と表現し、長期的な減速は避けられないと分析している。

「収束理論(より貧しい国はより豊かな国よりも高い成長率を享受する傾向があるという理論)に基づくと、中国の成長率は2035年までに2.4%へと減速し続けるはずだ」

「このような減速にもかかわらず、中国の一人当たり所得が2万ドルを大幅に超えるため、中国は『中所得国の罠』を回避することができるはずだ」

「しかし、中国のGDP規模(ドルベース)が米国を追い抜く可能性は低そうだ。中国は2035年までに米国の規模に並ぶはずだが、その後は収束が止まるだろう。これは、2035年以降、両経済の規模がほぼ同じになることを意味する」(ブリューゲル「Can Chinese growth defy gravity?」2023年6月20日)