グーグルマップに従って他人の敷地を通り抜けましたが、悪いのはグーグルですよね?

お嬢様 グーグルマップって時々変な道に案内してくるのよね。

松井弁護士 海外では崩落した橋に案内されて訴訟になった例まであるからね……便利だけど自分の目で道を確かめることは必要だね。

お嬢様 この前なんて、旅行先でグーグルマップを使ったら、他人の敷地を通り抜けてしまったわ。あれで何か問題になったら、グーグルのせいでいいのかしら?

松井弁護士 グーグルマップを使ってトラブルになることはありうるね。ちょっと説明するね。

他人の庭を勝手に通り抜けたことで考えられる罪としては、建造物侵入罪(刑法130条前段)が思いつくだろう。

しかし、刑法上の罪については罪を犯す意思、法律の世界では故意というが、故意がなければ罰せられないことが原則で、故意がなくても罰せられるのは、過失も罰するという規定が用意されている場合に限られる。

刑法を見てみると、建造物侵入罪は、故意がある場合のみ罰せられるルールになっているから、「間違って入ってしまった」というケースでは、罪に問われないことになる。

画像はイメージです(写真/Shutterstock)
画像はイメージです(写真/Shutterstock)

とはいえ、他人の敷地内とわかっていながら、「まあいいか」という軽い気持ちで通ってしまった場合は、故意があると認定される可能性があるから要注意だ。加えて、刑法上の責任を負わない場合でも、民事上の責任(損害賠償責任など)を負う可能性は残されているから、自分の目でしっかりと見て判断することが大切だよね。

ちなみに現在のグーグルマップにはそこが私道だと報告して修正してもらう機能がある。機会があれば使ってみるといいかもしれないね。

まとめ グーグルマップに従っただけなら犯罪ではない

要点1 建造物侵入罪は、故意がある場合のみ罰せられる
要点2 他人の敷地内とわかっていた場合は故意があり、犯罪とされる可能性がある
要点3 たとえ故意がなくても民事上の責任を負う可能性がある

刑法130条
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金に処する

文/松井浩一郎・アトム法律事務所

松井浩一郎、アトム法律事務所 著『それ犯罪です! 知らないとヤバい刑法の話』祥伝社
松井浩一郎、アトム法律事務所
松井浩一郎、アトム法律事務所 著『それ犯罪です! 知らないとヤバい刑法の話』祥伝社
2025/11/4
1870 円(税込)
272ページ
ISBN: 978-4396618520
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