鮮度と品揃えで勝負のヤオコー、衣料品専門店を出店したファミマ

東京23区の勢力図を塗り替えようとする勢力は他にもある。36期連続で増収増益を達成した埼玉県を地盤とする食生活提案型スーパーマーケット「ヤオコー」だ。今年6月に23区初となる「杉並桃井店」をオープン。11月には「板橋四葉店」も開業している。

「ヤオコー」は駅から離れた中規模店が主体だが、「杉並桃井店」は「トライアルGO西荻窪北店」、「板橋四葉店」は「まいばすけっと徳丸5丁目店」の商圏内にあると言えそうだ。

「ヤオコー」は低価格がウリのスーパーとは路線が異なる。地域密着型の売り場構成、高い鮮度と豊富な品揃え、ハイクオリティな弁当・惣菜類が特徴なのだ。例えば、「メヒカリ」や「ウマヅラハギ」のような、一般的なスーパーでは見かけない珍食材を扱うことも多い。

弁当も「ローストビーフライス ガーリック醤油」など、飲食店に引けを取らない商品を販売している。

東京都では「生鮮食料品等の購買意識について」というアンケート調査を行なっており、重視するポイントで1位だったのが「鮮度」だ。2位の「価格」は、2.6ポイント下がることが示されている。生鮮食料品においては、小型店よりも「ヤオコー」に軍配が上がる可能性がある。

いっぽうで、コンビニの逆襲も始まっている。台風の目となっているのがファミリーマートだ。2025年度上期の事業利益が2割も増加し、同期間において3年連続で最高を更新している。成長ドライバーの一つが衣料品だ。上期の売上は前年同期間の1.5倍だったという。

細見研介社長は決算説明会見にて、「スタートしてから5年目でこれだけ成長しているのは、まだまだニーズがあるからだ」と語った。何より、食料品を主軸としてきたコンビニ業界の常識を打ち破った功績が大きい。

衣料品ブランド「Convenience Wear」のデザイナーは、2016年のリオ五輪閉会式「フラッグハンドオーバーセレモニー」の衣装製作も担当した落合宏理氏で、その実力は折り紙つきだ。安い衣料品とは一線を画す、洗練された商品構成が人気の秘訣のようだ。アパレル事業に強い伊藤忠商事に買収されたファミリーマートらしい戦略でもある。

2025年9月に「Convenience Wear」の初のサテライトショップをオープンした。衣料品の専門店は、コンビニの新たな在り方を提案しているようで興味深い。コンビニは新たな方向性を模索している。

近年の衣料品ブランドの好調を受け、ついにアパレル専門店を出店したファミリーマートの靴下(写真/集英社オンライン編集部)
近年の衣料品ブランドの好調を受け、ついにアパレル専門店を出店したファミリーマートの靴下(写真/集英社オンライン編集部)
すべての画像を見る

取材・文/不破聡