「水ダウ」クロちゃん企画が“哲学”に?

『水曜日のダウンタウン』のスタジオに伊集院光がいるということは、即ち、“きわどい”説を放送するということだ。

この日のパネラーは、その伊集院に加え、千原ジュニア、フットボールアワー後藤輝基、高橋ひかるという考えうる最高クラスのメンバーが揃っていた。さらにプレゼンターにはFUJIWARA。盤石の構えだ。

企画は「サイレントクロちゃん」。喉のポリープ手術をして声を出せない状態になったクロちゃんの1週間に密着するという企画だ。病気で苦しんでいる人へのドッキリという側面もあるだけに、その裏にある番組側の意図や革新性にちゃんと気づき、的確に言葉にしてくれるスタジオのメンバーをキャスティングしたのだろう。

水ダウ恒例のクロちゃん企画が神回に (C)産経新聞社
水ダウ恒例のクロちゃん企画が神回に (C)産経新聞社

声を出せない1週間のスケジュールがスカスカになってしまったからなにかできないか、という事務所側の相談から始まったというエクスキューズもしっかり入れていた。そこにすかさず「ええ事務所というか、悪い事務所というか」というジュニアの一言。盤石だ。

番組ではクロちゃんに対して仕掛けを用意しながら隠し撮り。ニセ警官からの職務質問には、露骨に不機嫌になり、仲の良い福留光帆との食事では、コップの水を飲んで、「あーん、これおしっこじゃなくて聖水!」というノートに書いた文字を見せるなど、「サイレントセクハラ」を繰り返す最低っぷりがあらわになる。

酔っ払った女性から電話があれば、下心丸出しでビデオ通話に切り替え、「うちくる?」と口説くも、拒否されれば激怒。チャンスと見て、ウキウキした表情から一変する落差が凄まじい。

一方で、自身がプロデュースするアイドルグループ「豆柴の大群」のメンバー同士がケンカを始めると、必死に仲裁。親身になって、彼女たちに寄り添い、涙ながらに自分の思いを綴って説得する姿は、とても下心丸出しの男と同じとは思えなかった。

白眉だったのは、濱田祐太郎との対面だ。発売した書籍の握手会イベントで濱田祐太郎と相部屋になるという設定。

濱田といえば『R-1ぐらんぷり2018』王者であり、全盲の漫談家。つまり、喋れないクロちゃんと、目が見えない濱田が、どのようにコミュニケーションを成立させるか、というシチュエーション。

「哲学的なところ入ってきたね」と、VTRを見ている伊集院はこの日一番に身を乗り出して見守る。

それまでは、文字やジェスチャーなど視覚的コミュニケーションで乗り切ってきたクロちゃんだが、ここでは通用しない。モールス信号のように机を叩いて伝えようとするも、当然伝わるわけがない。