障がい者をバラエティで起用すること
ところで、濱田祐太郎が『水曜日のダウンタウン』に出演するのは、2018年5月2日に放送された「『箱の中身は何だろな?』得意な芸人No.1濱田祐太郎説」以来。『R-1』優勝後、いち早くバラエティで彼ならではの特性を活かしたのが『水曜日』だった。
そして今度は、ドッキリの仕掛け人として濱田を起用したのだ。それは常々、濱田が言っていたことだ。障がい者はなぜか「イジられる側」「ドッキリをされる側」になるのが前提なことに違和感がある、と自著『迷ったら笑っといてください』で綴っている。
『R-1』優勝後、「濱田祐太郎を落とし穴に落とせるか?」と書かれたことがあるという。これに対し、濱田は言う。
「俺が落とす側に回ってもええんちゃうか?」
『耳の穴かっぽじって聞け!』(テレビ朝日系、2024年6月4日)でも、「『逃走中』には出してほしい。僕がハンターとして捕まえる側で。暗闇ステージとか作ってもらえれば無敵かな」と笑わせていた。
濱田は『R-1』のようなネタだけでなく、自身の冠番組『濱田祐太郎のブラリモウドク』(ABC)でも、「2025日本民間放送連盟賞」のテレビバラエティ部門で最優秀賞に輝くなど、バラエティでも実力を示してきた。にもかかわらず、テレビで相応のチャンスを与えられているとは言い難い。
ならば、制作者の工夫次第で、それまで見たことがなかったような笑いを生み出せる可能性が広がっているということだ。今回、まさに濱田を仕掛ける側に回した『水曜日』は、それを証明していた。
クロちゃんと濱田が出会って15分。ついに2人は机の叩き方の違いによって「YES」「NO」を伝えるというコミュニケーションを“発明”する。2人の間に「言葉」が生まれた瞬間だ。「ヤバいな、これ。グッと来るな」と伊集院。
そこから自身のYouTube動画を流し、自分がクロちゃんであることを伝えたり、手のひらに文字を書くことで会話していくというようにコミュニケーションが“進化”していく。実は、濱田は目の前の男がクロちゃんであることは薄々勘づいていたと、自身のYouTubeチャンネルで語っている。
番組側からは、しゃべることができない人物が来ることは伝えられたが、その理由や誰かは明かされなかった。だが、たまたまクロちゃんがポリープ手術をしたというニュースを知り、そうではないかと思っていたのだ。
それが「悪い」ということでは決してなく、むしろ、濱田の仕掛け人としての優秀さを際立たせる結果となった。まったく知らないフリをして、すべての答えを喋れないクロちゃんから引き出しているのだ。
さらには「お互いにがんばろう」と伝えたクロちゃんに対し、「いやいや、いま『お互い』って言いましたけど、俺、一生なんですよ!」と、見事なツッコミ。「あっちの濱田もツッコミ上手いなあ」とジュニアもダウンタウン浜田を引き合いにして感嘆していた。


















