立憲「首班指名で『玉木』と書きたくなかった人もいる」

いっぽう、「玉木首相」「玉木財務相」が幻となったことで安堵の声が広がっているのが立憲だ。

「玉木氏が『基本政策の一致が必要』と主張するのに応じて、野田代表が譲歩に譲歩を重ねていたのが気がかりだった。政権交代の可能性がほぼ消えたなら、立憲議員は首班指名で野田氏の名前を書けばいい」(立憲議員)

野田氏はこの間、集団的自衛権の限定行使を容認した安保法制に関して「明らかに違憲だったことは私の知る限りない」と述べるなど、従来「安保法制の違憲部分の廃止」を訴えてきた立場からは国民民主側に歩み寄る姿勢も見せた。

ただ、これには党内のリベラル派から「立憲と国民民主では議席数にも圧倒的な差があるのに、玉木氏に対して下手に出すぎだ。屈辱的だ」との声も漏れていた。

立憲と国民には政策的な溝だけでなく、感情面のしこりもある。

「党内には小選挙区で国民民主に候補者を立てられ、国民民主候補と戦ってきた議員もいる。首班指名で『玉木雄一郎』と書きたくなかった人もいるだろう」(立憲議員)

榛葉賀津也幹事長(本人Xより)
榛葉賀津也幹事長(本人Xより)

また、ここに来て玉木氏と榛葉賀津也幹事長が、かつて榛葉氏が民進党代表選で蓮舫氏を支援したことを「黒歴史」と笑いながら語った動画を公開し、蓮舫氏が「悪口を笑いながら広める行為」と拒否感を示すなど、両党の溝は深まるばかりだった。

「今回玉木氏への首班指名が検討されたが、立憲と国民の溝はなかなか埋まらないことが改めて浮き彫りになった。玉木氏が首相になるには、やはり自力で国民民主の勢力を拡大するしかないのでは」(立憲議員)

首班指名をめぐる一連の駆け引きのなかで「内閣総理大臣を務める覚悟はある」と何度も強調していた玉木氏。今回は首相も財務相の座も遠のいたが、再びそのチャンスを手繰り寄せられる日が来るだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班