多様な業態を展開してつないできた『Ravintola KAMOME』の10年
――「Ravintola KAMOME」をオープンされてからのお話をお聞かせください。
もともとは「Kahvila KAMOME」(カフェ カモメ)として営業していましたが、2016年にレストランという形に業態を変え、「Ravintola KAMOME」(レストラン カモメ)としてリニューアルしました。
映画の影響もあって日本人観光客の方々が毎年一定数訪れてくださるようになり、昼時にはフィンランド人のローカルのお客様と、観光でいらっしゃる方々の両方で店内が混雑し、ゆったり過ごしていただくのが難しくなってしまいました。
そこで2017年に、隣の店舗が空いたタイミングで、お土産品や軽食を揃えたカフェ「Atelier KAMOME」を隣に新たにオープンし、ローカル客と観光客の動線を分けることで混雑を解消しました。
――「Ravintola KAMOME」と「Atelier KAMOME」2つのお店の経営は順調でしたか?
夏は観光シーズンであるため日本人の方が多く訪れるいっぽう、ローカル客は夏季休暇に入ってしまうので、地元の利用客は減ってしまいます。そして観光シーズンが終わった冬になると日本人観光客は減り、「Atelier KAMOME」には逆にローカルのお客さんがカフェ利用をしに来るようになったりと、シーズンによる客層の違いに対処することは結構大変でしたね。
結局その後お客様の流れを考えた結果、「Atelier KAMOME」のカフェ営業と「Ravintola KAMOME」のレストラン営業を合わせたほうが効率がいいという結論に至り、「Ravintola KAMOME」にカフェとお土産用什器を移動して1つにまとめることとなりました。
――また2020年にはコロナが流行し、世界中でロックダウンなどがありました。コロナ禍における経営状態はいかがでしたか?
コロナ禍が始まってからは、やはり経営は不安定になりまして、店を開けたり閉めたりを繰り返していました。ただ、ちょうどコロナが流行する前の2019年に、イギリスに研修に行き、スーパーマーケットの中で展開するテイクアウト用のパッケージ寿司のフランチャイズ経営をしてみないかという話を受けていたんです。
当時フィンランドのスーパーマーケットで、持ち帰り用のパッケージ寿司は売っていなかったことと、「Ravintola KAMOME」の経営コストを軽減するために他事業を考えていたことを理由に、このテイクアウト用のパッケージ寿司事業を2019年の10月から始めました。
その後コロナ禍が始まったことで、テイクアウトの需要が運良く急増し、パッケージ寿司事業は好調となりました。このおかげで売り上げは大きく落ちずに済んだので、まさに不幸中の幸いでしたね。その後2023年には、お店を完全に再開できました。