緊張する癖は直さなくていい
僕は緊張するタイプなので、そこが一番のウイークポイントではないかと思っています。同じチームの伊藤有希選手は、「全然緊張したことがない」というから驚きです。
僕は緊張したら、「どうしよう……」と頭の中が真っ白になります。そうなると、状況を客観的に見ることは、なかなか難しいかもしれません。
20代のころから苦労させられた「緊張する癖」ですが、今はもう直そうと思っていないし、直らない箇所だと思っています。ですから、自分で編み出した呼吸法だったり、7、8割の力加減を心がけたり、引き出しのストックを使いながら、緊張に対処しています。
そして、緊張と深い関係にある不安。不安の原因は単純で、一番の原因は「練習不足」です。だから練習量が足りていない人は、本番で不安になるし、人一倍頑張れた人は自信を持っています。「これだけやった」という練習量があるから、自信がつく。そしていいジャンプをしたときに、初めて余裕が生まれてくると思います。
調子が悪いときは余裕がないと思うし、何か少しでもマイナス面や不安があると、余裕は生まれません。十分な練習量を確保することです。
よく「平常心で本番に臨め」と言いますが、僕は無理だと思います。どんなに心身を鍛えても、試合の場で、平常心で戦うことは無理です。必ず緊張したり、勝つために何かしら考えていたりするので、「平常心で飛ぶ」ということはあり得ないし、できません。
逆に、緊張せずに試合に臨んだら、失敗すると思います。僕の経験でも、あまり緊張していないときの試合運びは、最初は落ち着いているけれど、飛び出す瞬間、急に余計なことをしたりします。緊張しているときとは違う、変な力が入るのです。「緊張していないのに、なんでこんなことをしたのだろう?」という敗戦がけっこうありました。
緊張し過ぎるのもよくないけれど、緊張しないのも駄目。集中が高まっていない状態では、緊張せずに飛べたとしても、飛距離が出ないのです。緊張しているときの方が、脳からアドレナリンも出て、突き抜けたジャンプになります。
「平常心で本番に臨め」というのは、ひとつの決まり文句で、その人をリラックスさせるために言っているだけだと思います。「余計な力を入れずに飛べ」と。













