部下「頑張って仕事をしてもどうせ評価されない」
AmazonやGoogle Map、ゲーム、アプリなどのレビューについて、ネットでしばしば話題になるのが、「日本人の評価は辛い」というものです。他の多くの国では強い不満がなければ星5を付けられるのに対し、日本では満足している内容のレビューでも星4や星3が付けられ、一つの不満があるだけで吐き捨てるように星1のレビューが付けられる傾向があると言われています。
大内範行氏は「日本人の評価が辛いぞ問題」というコラムで、グローバル企業における満足度調査でも同様の問題にぶつかり、その背景として日本には「松竹梅」の文化があるために真ん中の評価を選びやすいこと、また学校教育において「通信簿」で評価されることに慣れており、極めて優秀でなければ「5(よくできました)」を取ることができないのが一般的な認識になっていることを挙げています。
つまり、日本人は受けてきた教育や文化的な考え方から、評価を行う際は無意識に減点方式を採用する傾向が強いといえます。
この傾向はビジネスの現場でも多く見られ、「マネージャーやリーダーからネガティブな評価や至らない点の指摘を頻繁にされることはあっても、達成した物事について褒められたり感謝されたりすることはない」という状態を生み出しています。
当然、これはモチベーションの維持や向上にはつながらず、慢性的にこのような状態になると、不満が積み重なってメンタルヘルスのバランスを崩してリタイアしたり、離職したりする原因の一つとなります。また、「頑張って仕事をしてもどうせ評価されない」という認識につながると、リタイアや離職にはつながらなくとも、ネガティブな評価を受けるのを最小限にするためにリスクがある仕事を回避するようになります。
プロジェクトのように正解がない取り組みや、社内にまだ前例がない取り組みが進まない組織では、しばしばフィードバックがネガティブなものばかりになっていることがあり、リスクを取ることを回避する社内文化が形成されてしまうのです。
日本では減点方式の評価が一般的であるという傾向に加えて、日本社会が置かれてきた時代背景もビジネスにおいてネガティブなフィードバックを受けやすい要因の一つです。日本ではこれまで「失われた30年」という長い経済の停滞期を多くの企業が経験してきており、ビジネスの現場でも高い水準のノルマを達成できない場合に減点されることに慣れてしまっていたり、決められた業務マニュアルに沿っていない場合にミスとして叱責されたりすることで、「いかに失敗を防ぐか」に腐心するようになっているのです。
また、経済成長が見込めない状況では、コストカットが組織の運営において重視されます。多くの企業において、それは人材や待遇も例外ではありません。人員削減や待遇を抑えるための理由として人事評価が用いられるため、マネージャーからの評価はプラスの評価につながるポジティブなフィードバックは控えられ、ネガティブなフィードバックが多くの割合を占めることになります。
こうした状況が長年続いてきたため、日本の会社員は働く意欲を失ってしまっているのです。Gallup社がまとめた「State of the Global Workplace: 2023 Report」によると、日本における仕事への熱意や職場への愛着を示す社員の割合は、2022年でわずか5%と世界最低水準(世界平均は23%)とされています。これは社員20人中およそ1人しか仕事に熱意を持っていないということであり、かなり深刻な数値といえるでしょう。